世界設定4
光の国と闇の国
この二つの国には、他の国々と決定的な違いがある。それは、住民である。それぞれの国では、白翼族、黒翼族(俗にいう天使、悪魔)が国の主要構成員となっているのである。
彼らは、人間と比して極めて長命で、身体能力や魔力も人間を凌駕するのが一般的である。
一方で繁殖能力が劣る。というより、個体の死ぬ頻度が少ないために繁殖をあまり必要としない。そのせいか、性欲が著しく弱くなっている。
国の力関係は、実質この二国が抜きん出ている。今のところ彼らに他国を征服する気配は見られず、基本的には不干渉の姿勢を見せている。しかし、自国のみで完結することは難しいようで、他国において白翼族や黒翼族を見かけることもある。
追放されて悪事をはたらく者もいれば、他国の国政に深く関わっている者もいる、などといった噂話もある。
~光の国ルクロゥティス~
(光=ルクス、秩序=ロゥ、権力、支配=クラティア)
大地を隆起させ、雲と同等かそれ以上の標高に築かれた国。闇の国から唯一の陸路があるが、非常に険しい登山道と、光の国の堅牢な大門を通過する必要がある。
国全体に光を蓄える魔法陣が敷かれており、高所でありながら快適な気温に調節されている。それによって豊かな自然環境も創出されており、その点においては非常に住みやすい。
ただし非常に厳しい階級制度や戒律が定められており、従わぬ者には追放や死罪などの厳罰が処せられる。とりわけ性に関する規定が人間にとっては厳しいものになっているが、遵守できるのであれば人間も黒翼族も住むことは可能である。もっとも、人間と黒翼族は最下層の階級としてしか扱われない。そのせいか、住民の9割以上は白翼族が占めている。
光魔法は、高エネルギーかつ最高速が特長の強力な魔法である。威力が高く、発動時の角度が正確であれば必中である。また、光の密度を発散させることにより、威力はないが目眩ましとして使うこともできる。
金属等の反射体や水等の屈折体によって防がれてしまうが、逆にこれらを利用して死角から攻撃することもできる。
また、この国は治癒魔法の発祥地と言われており、その使い手が多い。治癒魔法は、身体の再生能力、熱による消毒や身体機能の活性化、水分やミネラルの補充など、医学や様々な属性魔法の複合によって完成したものといわれる。白翼族や黒翼族の高い自己再生能力の研究が完成を後押ししたとも考えられている。
光の弾幕の前では並の軍隊は何もできず、傷を負わせてもその場で回復されてしまう。この国の軍事力はまさに神がごとき強さを誇る。
白翼族は生まれつき羽が生えているが、羽そのものに飛行能力はない。しかし、大半の白翼族は教育の上で宙に浮く程度の術を身に付けている。
建物の造りは荘厳で、文字通り神秘の世界が広がっている。
ただ、この国で住むことが幸せかどうかは疑問である。厳しい戒律の裏側では、上級天使(高位白翼族には天使の称号が正式名称として与えられる。)達が自分達のいいように国の政治を執り行っているきらいがあり、ある程度の身分が与えられたとしても自由はほとんど存在しない。
白翼族ですら、国のあり方に閉塞感を感じて自分から他国へ脱出する者が後を絶たないという。
~闇の国インフェリークス~
(地獄=インフェルノ、異形=フリーク、自由=フリー)
草の国の者達でも立ち入らない深い森林に存在する国。光の国の陰になる時間帯が長いため昼でも薄暗いが、まったく日光が当たらないわけではない。
悪魔の住む国として恐れられているが、実は黒翼族の占める割合は住民の半数強くらいで、約3割が白翼族、約2割は人間も含めた他の種族である。
この国には明確な決まり事や身分制度がなく、よく言えば極端な自由主義、悪く言えば無法地帯である。性に関して無頓着なためか、やたらと露出の多い恰好の者もたまに見るが、本人達も見る側の者達もほとんど気にしない。住民の移動に関しては、来る者は拒まず、去る者は追わずで、いつの間にか上に書いたような構成比となった。
純血種を守るこだわりも少なく、白翼族や人間との混血種も時々見かける。白翼族との混血族には、羽の色に黒色が混じる、そもそも反発しあって羽がない 、等の特徴が表れる。
元来、黒翼族には吸血鬼や淫魔など、明確な種別があったようだが現在ではほとんどそれは失われてしまっている。稀に純血を受け継いでいる一族もいるが、珍しいという目で見られるくらいで特に身分が高いということはない。
闇魔法は、一言でいえば光のない空間を生み出す魔法である。具体的には、遮光壁を発生させる、光もろともその場のエネルギーを消散させる、超重力を生み出す、といったものがある。視界を奪うだけでも敵を困惑させるには十分な効果を持ち、攻撃方法としては後者2つが用いられる。特に、超重力場はあらゆるものを圧縮する凄まじい威力を持つが、扱いを間違えると自分が闇に呑まれて圧殺される。
もう一つ、この国発祥の門の魔法と呼ばれるものがある。これは、ワームホールを生み出して二地点を行き来可能にしてしまう魔法である。どんなに力を持つ者でも有効区間はせいぜい50m程度だが、奇襲や緊急回避には十分すぎる効果を発揮する。
あまりルールのない闇の国であるが、決闘に関しては暗黙の了解ともいえるルールがある。それは、全力での決闘は極力控える、というものである。能力の高い者同士が全力でぶつかり合うと、周辺への被害が甚大ではないどころか、闇の国はおろか大陸全体すら滅ぼしかねない。そのため、決闘の前には必ず互いに勝敗のルールを設定し、勝敗が決した際はそれ以上の逸脱行為はしないようにしている(ぶっちゃけ、東方のスペカルールみたいなものです)。このルールによって、誰でも割と気軽に決闘が行える。高位魔導師はもとよりそこらへんの一般人ですら日常的に行っているので、総じてこの国の軍事力は高いものになっている。もし他国と事を構えるとなると、住民は我も我もと戦いに参加する。もちろん普段の決闘とは戦い方を変える必要はあるが、そうするのは主力となる者達くらいで多くの者は割と好き放題に攻撃する。相手は圧倒的な武力差と戦闘を楽しんでいる様を見せつけられ、戦意喪失どころか感動すら覚えるという。
住居も様々で、家や城はもちろんあるが、洞窟やら地底に住んでいる者もいれば、家を持たず森に住んでいる者もいる。
他国の人間には色々と刺激が強すぎる国ではあるが、慣れてくると他の国では味わえない経験ができる。特に、黒翼族と同じく長命で高い能力を持つ白翼族達にとっては、何かとしがらみの多い光の国より住み心地が良いと感じられてそのまま永住する者も少なくないという。日照時間が少ないことと、夜型生活が肌に合わないというのが難点ではあるようだが。