ときめきメモリマス2(四百文字お題小説)
お借りしたお題は「デコポン」です。
御形薺。高校二年。布貝那実雄と小中高と同じ幼馴染だ。
那実雄の事が気になる薺だが、那実雄は親友の蘿蔔綾香に心を惹かれていると思い込んでいる。
確かめた訳ではない。そんな勇気は薺にはないのだ。
那実雄と顔を合わせると小学校以来の悪い癖が出て、顎で使ってしまう自分を悲しく思っている。
「御形さん、コーヒー牛乳買ってきたよ」
那実雄が告げた。
(御形さん、か……)
昔は名前で呼び合っていたのにいつの間にか名字でさん付け。
「ご褒美にこれあげる」
薺は母方の祖母からもらったデコポンを一個、那実雄に渡した。
「ありがとう、御形さん」
那実雄は嬉しそうにそれを受け取り、席に着いた。
薺は溜息を飲み込んで弁当箱を出した。
ふと前を見ると、那実雄は酸っぱそうにデコポンを食べている。
「あんた、お弁当は?」
那実雄は苦笑いして、
「忘れちゃったんだ」
「え?」
薺はドキッとした。
続きます。