まさおのこころ
俺、まさお
実はさ、皆には言えない秘密があるんだ。
それは──
左手がモンスターの手になっているのだ
もしかしたら人によっては、羨ましいと思う人がいるかもしれないけれど、俺はこれを疎ましく思っている。
なんか臭いし、でかいし力加減が出来ない。
スプーンなんて念じなくても曲げてしまうし、
野球なんてした日には握ったボールが破裂してしまうほどなのだ。
いつもは手袋や包帯などで見えないようにしているが、これはいくらなんでも不便すぎる。
そんな俺、まさおがこの春──
妖怪デビューしたのだ。
~op演奏~
モブA「おはよ~」
モブB「あ、おはよ!」
モブC「おはー」
寒い冬が明け、春の息吹が吹き
花々が顔を出し始める頃、
高校二年生ともなるこの春
まさおは憂鬱な気分でいた。
「はぁ...」
暗い気分のまま新二年生のクラス替え後の
自分のクラスを確認し、
まさおの教室、二年B組に入る。
すると、中学生からの友の涼太郎が
「おいまさお、ぁくさ、いや、
どうしたんだよ新学期そうそうしょぼくれやがって」
どうやら、同じクラスになったらしい。
「いや、な、朝からアホの顔を拝むだなんて、しょぼくれなくてどうしろって言うんだよ。」
俺はいつも通り涼太郎を茶化す。
「なんだとまさお!もう大判焼き驕りな!」
涼太郎が言う大判焼きと言うのは、
俺と涼太郎が一緒に下校するときによく立ち寄る
大判焼き屋で一つ80円で学生の財布にも優しい値段なのである。
お金はまぁまぁあったけど、涼太郎に驕るなんてなんとなくしゃくなので、流しておいた。
ふと、涼太郎は俺の左手を見て言った。
「そういやまだ治らないんだな、それ」
まぁな、と俺は言ったが、内心ヒヤヒヤしていた。
なにせ、左手がモンスターな事はまだ誰にも言っていなくて、この事を知っているのは家族だけなのだ。
だってバレたらまずいよね?うん
涼太郎には「逆立ちの状態でトイレに腕突っ込んだまま水を流してツイストしてみたら粉砕骨折した」
と言ったら本当に信じて、ずっとそう思っているらしく、
そのお陰で俺のあだ名がツイストイレットまさおとなって学校中に広まったんだけど
俺はもう開き直って、気にしていない。
「まぁな、粉砕骨折だしな。」
そんなもんかぁ...と涼太郎。
コイツ本当にアホだな
ガラガラッ
「はーい号令。」
誰かと思えば、二年B組担任の下原先生だ。
教室の時計を見ると、もう朝のホームルームの時間だった。
そんなに話してたつもりは無かったんだけどな
俺と涼太郎は慌てて自分の席に戻った。
「起立、気をつけ、礼」
学級委員の常口さんが、号令をかけるのだ。
実はまさおも学級委員で、ひそひそと常口さんのサポートをしていたのだが、そのたび足を引っ張っている。
「おはよーございます」
全員で礼をして言う。
こうして朝のホームルームが始まるのだ。
「おはようございます。えー、
二年B組の担任を務めさせて貰います。
下原といいます。えー、もう知ってる人は知ってると思うんだけど、一応自己紹介ね。
えー、あと、来週の保護者会の参加の手紙、出してない人は金曜日までに提出してくださいね。
それと...」
下原先生は一年生の時も担任だったので、前から知っていた。
そして先生は真剣な表情になってこう言った。
「最近、ここら辺に不審者が現れたとの情報があったので、皆さんはなるべく一人で帰らないようにしてくださいね。」
どよめく教室。
すかさず俺の出番だ。
「はーい静かにー!」
ところがどっこいコイツ等話が膨れに膨れ上がって、俺の言葉なんて聞きやしない。
アホの涼太郎なんて、親友の森上と「不審者は俺が倒す」なんて言って盛り上がってやがる。
やっぱコイツアホだわ
ワイワイガヤガヤ
「静かにしてください。」
シーン...
一瞬で教室が静まり返った。
その声を発した
のは案の定、常口だった。
まさに鶴の一声とはこの事だな、
にしても俺に失礼だろとも思った。
重い空気の中、先生が一番始めに口を開いた。
「常口さんありがとうね、それじゃ号令。」
常口さんは会釈をし、朝のホームルームの終わりの号令をした。
だがまさおはこの時、この「不審者」を軽視していたのだった。まさおがまさか、あんな事になるとは夢にも思っていなかったのである。
つづく
~ed演奏~
次回予告!
チャラチャーチャッチャー
新学期一日目を終え、涼太郎と森上と一緒に下校するまさお!!!
そこで遭遇する「謎の人物」!?
さて、まさおは無事に帰れるのでしょうか!
謎の人物とは、一体誰なのかぁー!?
それは...次回のお楽しみ!!
乞うご期待!!!!
チャチャーチャーン