表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/33

第2章 第4節

 時は過ぎ、コウキとユウキの入浴時間も終わり、先ほどの食堂に一同は揃っていた。

 火山の連なるイフディーネ火山区画は温泉が自慢で、下町の宿屋から市民街の公用浴場、貴族街の風呂は全てが温泉である。

 その所為か、氷海区画ではまず堪能できない温泉を堪能できた事で、多少の満足感に浸っているウンディス三姉妹とその侍女エリー。

「とても気持ちよかったですね」

「――ちょっとのぼせちゃったですー」

「――私もです。お姉様」

 ミーコ、ユミの2人が少々のぼせ、少々服を着崩してソファーに寝そべり、エリーに団扇で扇がれていると言う、少々男性の目には毒な光景があり――

「何も蹴飛ばす事無いだろ!」

「ノックしただろうが!?」

 ――その一方で、ノックしたにも関わらず、入ってきたユウキとコウキをユサミの蹴りが出迎え、めり込んだ顔面を抑えてのたうち回る光景があった。

「だからごめんってば。ついミーコ様のだれた姿が可愛くって」

「――やっぱオレ達が先に入るべきだったよもう」


「――? どうしたんでしょーね?」

「――ミーコ様は、お気になさらず。どうせ灯りなら消したのに」

 今のやりとりの間に、服を着直したユミとミーコが、何が起こったのか良くわからず、ユサミ達3人のやりとりを見て首を傾げていた。

「――さて、落ちついた所で……あれ? 何話そうとしたんだっけ?」

「え? えーっと……なんか頭ぶつけたショックで抜け落ちたかな?」

「今からどうするか考えるんでしょ? しっかりしてよ、もう」

「だったら頭狙うなよ!」

 ぶつくさと文句を言いつつ、コウキは頭をさすり――痛みも落ちついた所で、レナ達にこういう状況の経験はない為、この場の纏め役はコウキの決定し、これからの方針を手掛ける事に。

「――さて、食事もとって温泉にも浸かって、疲れは取れましたね?」

「はい――考えてみたら、少々不謹慎ではありましたが」

 レナの言葉に続く様に、ユミにミーコ、ユサミは揃ってコウキから顔を背けた。

「それに関しては文句は言いません――と言う訳で、今すぐ移動します」

「今すぐ……ですか?」

「こっからイフディーネまで距離があるから、国に事故の知らせが届くのも捜索隊がここに到達するのも、そう早くはない――しかし」


 ヴィィィィイイイイイイッ!!


「――? 何だこの音?」

「羽音、だよな? でもこんなでかい音――って、まさか」

 この寄宿舎は火山区域のど真ん中だけあり、素材は耐熱処理が施されていて、非常用の氷石も大量に用意されている。

 開閉は出来ないが、耐熱ガラスの窓もあり、嫌な予感を抱いたユウキがそっと窓に歩み寄り――カーテンの隙間からそっと外を覗き見る。

「……マジか」

 ユウキの目に映った光景――それは全身が紅色と黒を主とした、体長1mはありそうな昆虫。

 岩をも噛み砕きそうな顎に、シューシューと煙を上げながら高熱を発する針を持ち、羽音とは思えない程大きな音を立てる2対の翅で空を飛ぶ蜂。

 本来レナ達、そしてユウキ達の表向きのここに出向いた理由――討伐対象モンスター、ヴォルケーノ・ビーの群れ。

「……どうした?」

「……ヴォルケーノ・ビーが居る。それも大群で」

「何……!? まさか!」

 そう言うなり、コウキの行動は早かった。

 すぐさま食堂から出て行き、手ごろな部屋に入ってはカーテンの閉まった窓から、そっと外を伺っては下がり、伺っては下がり――。

「――移動は無理みたいだな」

 食堂に戻るや否や、真っ先にそう告げた。

「――大量発生の話自体は本物だったようですね」

「ということはー、このたいりょうはっせいをきっかけにー、けいかくしたのかもしれませんねー」

「かもしれませんねー……所で、ヴォルケーノ・ビーって夜行性なの?」

「いや、ヴォルケーノ・ビーは本命とは別個の巣を幾つも持ってて、満月の夜に引越す習性があるって話きいた事がある」

「……なんつー迷惑な習性だ。じゃあ最悪、明日の夜まで動けない可能性もありかよ」

 今移動する為の次点巣が近くにあるかもしれないなら、間違いなくそうなる

 となると――

「――仕方ない。移動は諦めて、今日は一先ず寝るか」

「……寝られそうにないけどね」

「違いないけど、今はそれしかないんだ。さて――女性陣はソファー使ってくれ。寝袋持ってきてるから、俺達はそれ使って少し離れた所で寝るよ」

「うん、そうするよ――レナ様達には、辛いかもしれないけど」

「大丈夫です。この状況では、寝る場所があるだけ幸福ですから」

「ですですー。だいじょーぶですよー」

「はい。ご心配なさらずとも、遠征でのこういった環境は初めてではありませんから」

「んじゃ、決定だな――んじゃユウキ、ちと離れるか。」

「――そうだな」

 眠れそうにない――そう思いつつ、ユウキはコウキにもらった寝袋に包まって、目を閉じ……


 ――聞こえるか?


「――!」


――聞こえているなら応えよ

――我が声に……●●●の声に


「――? ……また?」


 ――我が名は●●●……我が声に……えよ。


「――なんなんだ? 聞こえねえ」


「…………やはり、ユウキさんは」

 うなされる様なユウキの声。

 そして、聞こえない筈の声が聞こえる――そんな様子を見ていたレナには、ユウキの陥っている状態は、覚えがある事だった。

「――あの夢は、これを示唆していたのかもしれませんね」

 そう結論付けると、レナはユウキから眼を話し、目を閉じ――疲れ故か、寝静まった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ