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一日目 学校 #2

 

 こういうゲームのシステムは把握してしまっている途緒だった。

 何故なら彼女は、ゲームトリップ体質。

 秘密シークレット手段リゾートを手に入れる前の彼女は、有名ゲームの攻略方法やシステムの解説を求めてゲーム雑誌を読みまくっていた。

 究極攻略本とかの分厚い2000円ぐらいするのも読破した。

 結局、事前に準備したゲームにトリップすることは無かったが、彼女にその頃から発現し始めていた絶対パーフェクト攻略情報記憶メモリーが彼女に凄いことをやらかすことを許した。


 恋愛シミュレーションの大金字塔である、『ときめいてメモリーズ』(略すとそのままになっちゃうので略称を考えてはいけません)や『同窓生』、『ハザクラ大接戦』などの恋愛ゲーム、または恋愛要素の強いゲームたち。

 途緒はそれらのゲームを頭の中でクリアしてしまっていた。

 妄想の中で恋を成就させてきた。どのルートでも完璧に選択肢を覚えきった。ミニゲームもこなした。


 そんな彼女だから考える。


 今朝の早朝に目を覚まして家の中をうろついたのはイレギュラーな事態。

 また、通学ルートはいわば強制的な移動であり、自由行動とは違う。


 これからの途緒ルネの行動はいわば初めて与えられた試練。なのだ。


 はずれを選んでしまうと、なんのイベントにも出くわさない。もしくは既出の攻略対象ヒロインとばったり顔を合わす。

 それではいけない。

 まずは、攻略対象ヒロインを幅広く出現させるのが王道クリアの第一歩。

 それが、一刻も早い現実世界への復帰に繋がる。


 保健室を出たルネには選択肢が与えられなかった。

『教室、グラウンド、職員室、校内をぶらぶらする』みたいな中から選んで移動するのかと思ったけどそんなんじゃないらしい。

 ほんとに自由に行動できるみたいだ。


 実は今の途緒ルネの頭の中は、ベルのことで一杯だ。

 恋をしてしまいそうだ。女子同士なのに。

 そういえば、途緒は、先にあげた『ときメモリー』や『ハザクラ』を脳内でプレイしてしまっていた時など、男子に興味が無くなってしまっていたような気がする。

 百合体質かとかガチレズか? といわれればそうではない。

 単にゲームの主人公と同化していってしまうのだ。それがトリップであっても、脳内プレイであっても。


 というわけで、今のところの『アタリ』の本命はベルなのだけれど、恋は盲目。

 恋は判断を鈍らせ、決断力だけを上昇MAXさせる。


 中和が必要だ。ベルと同じくらい魅力的な女子と出合って、どっちつかずの状態を保つことが健全だ。

 よりよい最短ルートでの攻略に繋がる。


 ルネが向かったのはグランドだった。

 ベルと対極、それで居て魅力に溢れる人材といえばそりゃあもうスポーツ女子しかいないでしょう?

 それが、陸上部とかだったら最高。

 バレー部だとちょっと無難すぎる。

 バトミントンとかも微妙。

 テニス部っていう雰囲気でもない。

 やっぱり陸上部最高!


 短パンとタンクトップ!!

 あれに勝る神器は、グラウンドにはもうない。


 というわけで、ルネはグランドに向かった。体育館じゃない。ここは運動場でしょう!


 心得たものなのだ。部活に所属していないルネはスポーツ少女との接点は少なく思えてしまう。

 だけど、そこはゲームの世界。

 ちゃんと用意してくれている。


 水のみ場イベント。


 ほら、居た!


 蛇口に口を近づけて水をジャブジャブ飲んでいる女の子。

 巨乳なのがちょっとあれだけど、下品なほどの爆乳ではないから許容範囲。

 白髪のポニーテール。スポーティだ!

 短パンにタンクトップという完璧ないでたち。

 日に焼けた健康的な肌。


 ルネは心のなかでガッツポーズをした。ガッツ石松よりも完璧なポーズだった。本家を超えた。


 きっと性格だってさばさばしていて付き合いやすい。途緒の好みのタイプだ。

 遠くで眺める感じでもじもじしていると、少女のほうから近づいてきた。


「なんだ? お前、入部希望か? 見学か?

 一年か?」


 ルネはうっとりと恍惚感に満たされた。

 これだ。求めていたのは、このぶっきらぼうな態度。

 それでいてかもし出される面倒見のよさ。姉御肌。

 琉球空手とかきわめてそうだ。強そうだ。頼りになるタイプだ。


 ルネがうっとりと押し黙っていると、

 体育会系女子は勝手に自己紹介を始めた。


 ここでエンカウント。

 少女の名前が明らかになる。

 エル・キューア、三年生の先輩。


 ルネの頭に浮かんだポップアップなど知る由も無いエルは、


「俺は、エルってんだ。

 部活は……、まあ掛け持ちだな。

 基本、どこの運動部にも顔が利くぜ!


 もちろん男子にもな。

 女子の練習メニューだとぬるくてな。

 ちょくちょく男子の部活に参加させてもらってるんだ」


 きゅぅん(はあと)。

 一人称『俺』。

 やっぱり面倒見がいい。

 並外れた体力をそれとなく披露するその腕前。


 途緒の想像したとおりの人材だった。

 ベルのような正当派もいいけど、こういうタイプにも胸に矢を射られてしまう。


 あれ? あたしってこんなキャラだったっけ?

 と途緒は思ったり思わなかったりしたが、ルネとしての役柄を思い出す。


 ルネは……、部活には入っていない。

 入ったら、そこに合同練習とか言ってこのお姉さん(現実の途緒はアラサーなので抜群に年下なのですが)が遊びに来てくれる?


 ひょっとしたらマネージャ的な攻略対象ヒロインも居るかもしれない。


 だけど、油断は禁物。即決は悪手。

 どう切り出そうか、悩んでいるルネに、エルは、


「なんだよ、煮え切らない野郎だな。

 練習があるから、俺は行くぜ」


 と言い残して姿を消してしまった。


 あっ……。彼女の、エルのルネに対する好感度が下がってしまった。

 明らかにそれを自覚する。


 しかし既に時遅しだった。




◆今回初紹介の攻略対象ヒロイン


エル・キューア(18)

性格:体育会系

属性:先輩・スポーツ系・巨乳

外見:浅黒い肌・白髪をポニテ

備考:スポーツ万能

ポ:???

 何故だかルネがぞっこん 好感度はいまひとつ



エル:煮えきらねえ野郎だぜ!

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