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一日目 学校


 気が付くとベッドの上だった。

 もしかして……、ゲームオーバー?


 途緒ルネは記憶をまさぐる。


 たしか……、シューナに新開発の魔法薬を飲めと迫られたんだった。

 で、青い薬と黄色い薬と緑のとから選ばなくっちゃいけなくて……。

 選択肢から選ぶ制限時間が切れたんだった。

 優柔不断なルネだった。


 そう、その直後から強制イベントっぽいのが始まった……。




「なるほど、目移りして選び難いという、ルネの好意は身に染みた。


 できることなら全て飲み干したいということと理解する。


 その願い叶えて進ぜよう!」


 と、シューナはどこから取り出したかわからないバケツに数多あまたの試験管の液体を注ぎ始めた。


「えっ、ちょっと……、まさか!?

 それを呑ませるつもりじゃあ……。

 それってまずくないですか?」


 と尻り込み絶好調のルネだったが、シューナは意に介さない。

 強制イベントだ。

 選択肢も出ない。

 ルネにはただただ進行を見守ることしかできない。

 逃げられない。体が動かない。

 自由度が少ない。


 あと、2~3本で全ての試験管の魔法薬がバケツに注がれる……。

 といったところで……。


 ドカーン!!

 とまでは行かないが、小規模な爆発が起こったのだった。

 ルネは爆発に巻き込まれた。




 そこまでがルネの記憶にある情報。


 そして気が付いたらここで目が覚めた。

 知らない天井だ。


 もちろん、現実世界での途緒みちおの部屋ではない。

 ルネ・ハフーガの自室でもない。


 爆発に巻き込まれる、イコール、即死、セーブポイント――朝ルネが目覚めるシーン? から再スタートというわけではなさそうだった。


 周囲を見渡そうと起き上がりかけたとき、ルネの目の前に少女の顔が飛び込んできた。

「あ、起きたのね。ちょうどよかった!」


 ほんのりかつ最上級の笑顔で喋りかけて来たのは……。


 ベルだ。ベル・ネティバルス。

 ピンクのゆるふわなロングヘアーは正統派美少女にこそふさわしい。


 間近で見たせいなのか、途緒ルネはドキっとしてしまった。


(あら、やだ……、このコ……可愛い……)


 途緒ルネの頭の中に浮かび上がった情報によると、ベルは同級生。

 今年度クラス分けの発表は明日の始業式で行われるが……、このコはクラスメイトに違いない。

 ずっと顔を合わす存在。

 サブ攻略対象(ヒロイン)ではありえない。

 そう確信できるほど、ベルの笑顔は素敵だった。


「覚えてる? 今朝校門でちょっとした爆発事件があって、

 ルネくんも巻き込まれたみたいで、倒れてたところをここに運び込まれたのよ。

 意識は無かったみたいだけど、病院に行くほどでもなさそうってことで」


 とベルは快活に話しかけてくる。


「ああ、シュー……」


『シューナが……』と言いかけて、ルネは思いなおした。


「いきなり爆発したのはなんとなく覚えてるけど……」

 と言いなおす。


 この世界で爆発を起こすのがどれぐらい悪いことなのかわからないが、仮にそれが犯罪的な責められるべきことで、そうなると真犯人のシューナは刑務所的なところに入れられたりして、シューナ攻略のためには面会室での限られた接触しかできないとかいう事態に陥ったら、なにかと面倒だからだった。

 もちろん、普通のゲームなら爆発ぐらい笑い話で済むし、大事にはならない。

 念には念を入れる。

 無難が一番なのだ。


 秘密シークレット手段リゾート解禁までは、無難を貫き通すのが途緒ルネのプレイスタイルだ。


 体を起こし、特に怪我とか痛みが無いのを確認してベッドから降りようとするルネに、ベルが言う。


「大丈夫そうね。ちょっと心配だったから帰る前に寄ったんだけど。


 あ~、安心したらお腹すいちゃった」


 ちょっと……、なんでこんな何でもない台詞で胸がときめいちゃうのかしら?

 と途緒ルネは思った。

 笑顔も薄れ、ごく普通の表情に戻っている。

 なのに、超絶可愛い。


 このコは、メイン攻略対象(ヒロイン)に違いない。

 このコといちゃいちゃしたい。

 女子でアラサーの途緒が、こんな短時間の接触でそう思ってしまうくらいベルの魅力は今まで登場した誰よりもずば抜けていた。


 女神だ。既に登場済みの本物の女神なんてただスタイルがいいだけのエロババアに過ぎない。

 こういった、ごく普通の少女にこそ、女神、そしてヒロインの栄光が与えられる。


 順当にいけば……。

 ベルが『アタリ』なのだろう。ベルの攻略こそが正しく進むべき道なのだろう。

 これは、ベルとのフラグを立てるゲームなんだ。

 ベルは今はルネはただのお友達なんだけど、徐々に恋人未満になって、そして……。


「あ、別に……、心配はしたけど……、それは本当だけど、


 友達としてだからね!」


 と、ベルはお友達宣言も忘れない。


 ほんとにこのコはヒロインだ。天性のヒロインだ。

 週末どころではない、平日営業のヒロインだ。

 ベルへの好感度を上げていく今後を考えれば楽しくって仕方がない。


(あたし……このコのためなら……、

 百合に堕ちていくかも知れない……)


 途緒ルネはかろうじて正気を保つ。

 ゲームキャラに本気で恋をするのは構わない。それが攻略に繋がるのであれば。

 仮に、万一だけどベルが『アタリ』で無かったとしても、一周ぐらい無題にするのは本望のような気がしていた。


 だけど、やれることはやっておきたい。気を取り直してルネはベルに聞いた。


「どれくらい気を失ってたの? あの……、新入生歓迎イベントは?」


 答えたのはベルではなかった。


 ベルの背後からひょいっと人影が現れる。


「そんなもん、とっくに終わっちまったよ」


 と新たな登場人物が答えた。


 現れたのは二人。


 まったく同じサイズ、同じ規格。違いと言えばその表情。

 どこかムスッとしているのと、どこか虚ろなのの違い。


 青いショートカットの少女が二人。

 残像とか、視界がぼやけているとかではない。

 双子なのだ。瓜二つのそっくりさんだ。

 さっそく、ルネの脳内に二人の情報がインプットされる。


 ルネの質問に答えたのは、双子の姉。機嫌が悪そうな表情のほうだ。

 レタ・サフール。

 同級生だ。


 去年(一年生時)のクラスが一緒だったかどうかまでは思い出せない。

 おそらくそれはゲームのプレイにおいて重要ではないのだろう。だけど、多分一緒だったんだろう。

 ルネと一緒じゃなくてもベルとは一緒のクラスだったんだろう。

 ベルと仲良しなんだろう。わざわざ一緒に行動してるくらいだから。

 途緒ルネには説明書にのっているぐらいの情報しか与えられない。

 聞けばわかるのだろうし、この後明らかになるかもしれないが。


 もう一人のほうは、レナ・サフール。双子の妹。

 双子だから当然同級生。去年のクラスがどこかわからないのは姉のレタと一緒。


 こうして並んだ二人を見比べてみると、ほんとに背格好からなにからほとんど同じだ。 キャラデザインを考えるのが楽でしょうがない。と途緒ルネは思った。

 一人考えたら二人分になるんだから。


 せめて髪の色とか髪型とかを変えたらいいのに……。

 右側を髪留ヘアピンで止めているか、左側をそうしてるかの差を作るとか……。

 とも思ったが、ひょっとすると今後、ほんと同じ容姿なのを利用した入れ替わりイベントがあるのかも知れないとも思った。


 二人とも、まあまあ可愛い。それはそうだ。美少女ゲームの攻略対象ヒロインなんだから。

 だけど、ベルの可愛さには到底及ばない。


 そんな途緒ルネの思惑をよそに、ベルは後ろを振り返りながら、


「さあ、行きましょうか。


 どっかでご飯食べてから帰りましょう」


 と後ろに居た二人の少女に声を掛ける。


 ルタが応じる。


「ったく、面倒かけやがって。まあ、大したことなくてよかったよ。


 行こうぜ、ベル。俺も腹が減っちまったよ」


 と早くも退出宣言。そのままベルを伴って出て行ってしまった。


 双子の妹のほうのレナが、


「気を付けて! これは序章プロローグなのかもしれない」


 と吐き捨てていったのはまったく何のことだか意味がわからなかった。




 さて……、どうしたものだろう。


 おそらく……、シューナとの一件でイベントをだいぶとスキップしてしまった。

 新入生歓迎イベントの前後で出会うはずだった下級生たち。

 その数はわからないが、一人や二人ではないはずだ。


 とりあえず……、学校をうろついてみようかしら……。

 まだ誰か残っているかも知れない。


 そう決意したルネは、保健室を後にした。




◆今回初紹介の攻略対象ヒロイン


ベル・ネティバルス(17)

性格:しっかり者

属性:同級生・癒し系

外見:ピンク髪ゆるふわロング・正統派美少女系

備考:3人姉妹の長女

ポ:旗ポ? ルネはベルと恋に落ちるのが必然?


レタ・サフール(17)

性格:すぐキレる

属性:同級生・豪快・双子・エルフ

外見:青髪ショート

備考:レナの双子の姉

ポ:???


レナ・サフール(17)

性格:中二病

属性:同級生・邪気眼・双子・エルフ

外見:青髪ショート

備考:レタの双子の妹

ポ:???




◆今回登場の攻略対象ヒロイン

ベル:じゃあ、あたしもう行くから。また明日ね

レタ:面倒かけんなよ!

レナ:闇の煽動を感じる……

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