二日目 朝の時間
はぁあうざいわー。ゲームトリップだというのに始業式とか参加させられるの辛いわ~。
どうせ、ゲーム内ではスキップしてたイベントなんでしょうに。
わざわざ体験させてくれなくてもいいのに。
何十年ぶりかしら。こういう退屈な儀式に参加するの……。
と途緒は思った。
今回はわりと真面目に進める予定である。なぜなら先ほど適当に短編を書き終えたばかりで、そっちでいまいちハジケられなかったからテンションが低いのである。
以上、作者の心境を語りました。
退屈な時間を過ごし、大切な時間を失い、ルネは教室へと戻った。
新しいクラス、新しい出会いである。
どういうわけだか、さっき教室に行ったら誰も居なかった。
ゲームイベント的にシナリオが用意されていない部分なのだろうと思う。
それならば、なぜ始業式は滞りなく行われたのか?
どうして校長は貧血でぶったおれる生徒に構わず長い長い演説をしたのか?
その台詞はどこから生まれてきたものなのか?
すべて全部謎である。
来る!! 奴が! 攻略対象が来る!!
ルネは身構えた。
だめだ。昨日はベルやらアンナやらにメロメロになったところだ。
たしかベルは同じクラスだ。
「おはよう! 僕と隣の席だね!!」
違った。で、ここで未消化イベントのボクっ娘を男と勘違いする手はずを強制的に踏まされた。
なお、話しかけて来たのは、あっさりさっぱりな性格の同級生のルー・シャーンルである。エル・キューアの自称弟子だ。緑髪ベリーショートで小麦色の肌という健康的な女子である。
「えっ? 隣なの? 俺女子と隣がよかったなあ」
ルネの意識とは無関係に口が動く。
「馬鹿! 僕は女だよ!」
はい、消化。だって、去年も一緒の学校に居たんだもん。僕っ娘だって気づかないなんて無理なんだもん。制服だって女子用なんだもん。。。
「一緒のクラスになれて僕嬉しいよ。
席も隣なんて運命的だね」
はい、一丁あがりである。惚れるから惚れるの「惚れポ」である。
理由なんかいらない。ルーの好感度はおそらくマックスだろう。
あえて理由が必要なら(席が隣になった)『運命ポ』だ。
クラスを見渡す。
もちろん、モブキャラの男子生徒タニヤーマとタニグーチも居る。
昨日会った、ベルもいる。
昨日会った、レタとレナも居る。
ご都合主義だ。なんてったって原作は小説でそれをゲーム化したやつにトリップしてるんだから。
いらないキャラなんて居ない。
だが、他の生徒はほんとのモブ(名前すら与えられない存在)のようで、顔もまったく印象に残らない顔をしている。
あたりを見わたし続けて、ふと一人の女子生徒に目が留まる。
えっ!
鏡を見ているようだ。もちろん今はルネの顔になっているので途緒の顔ではない。
服装も違う。
だけど……そこには……、現実世界の自分をそのまま召喚したとしか思えない女子生徒。
若く見られがちだけど実年齢が20代後半の途緒。肌艶がゲーム的に処理されているので、それほど老けては見えないが……。
お世辞にも、女子高生として周囲に溶け込んでいるとは言い難い――なんてことを言うと、途緒のモデルになった30代前半? のフォトショップ店員に怒られそうだが――異様な生徒。
攻略対象情報がポップアップする。
名前:ミッツィ・カシマール
属性:???
(メガネをかけたあの姿…… どうみてもあたし自身だ!)
◆今回初紹介の攻略対象
済:
ルー・シャーンル(17)
性格:あっさりさっぱり
属性:同級生・僕っ娘
外見:緑髪ベリーショート・小麦色の肌
備考:エル・キューアの自称弟子
ポ:運命ポ
ミッツィ・クァシマール
???
◆今回登場の攻略対象
ルー:僕だよ!
そして、ルーというのが二人いるということに気が付きました。