そして練習へ……(14)
「それは簡単だよ」
先輩はにこっと微笑んだ。
「成松くんが、他の男の子とは違うからだよ」
「俺が? 他のと違う?」
「うん」
言ってることがイマイチ理解できないんだが……。いたって平凡な男、だよな?
「私と初めて会った時のこと、覚えてる?」
「はい」
忘れるわけがない。いや、忘れることができなかった。何故か胸の中で、それを忘れたくないと思っている自分がいるんだ。それはきっと、大切な出会いだからだろうと、自分で思う。
「自分でもよくわからないんだけど、成松くんには全く恐怖感を感じなかったんだ。何だろう、何だかすごく優しい感じがしたんだ。ほら、私紙をばら撒いちゃったけど、成松くんは怒りもしないで一緒に拾ってくれたでしょ? その時に、成松くんなら大丈夫そうってそう思ったんだ」
「いや、あの状況を見たら、誰でも拾ってくれると思いますけど」
「でも、表情が違っていた。今までの人は、みんなしょうがないなって顔したけれど、成松くんは気遣いの想いで溢れていた。多分、今まで会ってきた男の子の中で一番」
「そうですかね……」
「えへへ、こんな性格だから、私は男の子を見る目は相当肥えてるはずだよ」
「何か、照れちゃいますね」
「だから、これからも仲良くしようね、先輩と後輩として」
先輩と後輩か。




