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そして練習へ……(10)
「私は才能なんてないからなー」
「そんなことありませんよ。先輩は才能一杯持ってますから。いや、才能しかありません。現に演劇なんて、他の人には失礼ですけど部員の中で一番うまいと思いますよ」
「それは、他の人よりキャリアが長いからだよ」
「それこそ才能ですよ」
「え?」
「普通の人なんて、初めてやることなんてそう長続きしないじゃないですか。だけど、先輩はそれをあきらめず、今もこうして続けている。それはもう立派な才能に他ありませんよ。あきらめずにやり続ける才能。すでに先輩はそれを手に入れてるんですよ」
「成松くん……」
「だから、そんなこと気にしなくていいんですよ、ね?」
自分で言っておいて、すげぇ恥ずかしいな。今にも体がエクスプロージョンしそうだ。
でも、先輩は――




