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そして練習へ……(9)
「はい、どうぞ」
「すいません、ありがとうございます」
先輩がココアを淹れてくれた。一口飲むと、チョコの甘みが口いっぱい広がった。
「おいしいです」
「そう、よかった」
先輩もそう言って小さな口でココアを飲んだ。
「演劇も、本気でやると結構疲れますね」
「うん、そうだね。おなかから声を出すと、消費カロリーも馬鹿にならないから
「俺、考え改めなおしたほうがいいみたいです」
「ふふ。でも成松くん、初めてにしてはすごく上手に読めてたと思うよ」
「いや、そんなことは。ただ夢中になって字を追っていただけですから」
「それだって上出来だよ、普通はそんなに上手に読めないものなんだから」
「そうなんですか?」
「うん、私が初めて演劇をしたのは中学生の時なんだけど、最初は台本に書いてある字も満足に読めなかったもの。普段使っている言葉さえも、感情の有無ですごく印象が変わるから、それが中学の時にうまくできなくてすごく苦労した覚えがあるわ」
「そうなんですか」
「成松くんはそれができてるし、飲み込みがいいんだね」
とんでもない。それは一重に先輩の文章の読みやすさのおかげだろう。




