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エチュード・イズ・ディープ(5)
「成松くん」
「はい?」
「深く悩まなくてもいいんだよ。エチュードは完成度の高さじゃなくて、楽しくやることが一番の目標なんだから。だから、あんまり気にしないで」
「そうなんですか」
楽しくやればいいか……それを聞いて少し安心したけど、ひとまず何を演じるか考えなくては……。だがしかし……。
「はい終了~~。じゃあ順番決めるから集まって~」
無常にも時間となってしまった。だが、焦るのはまだ早かった。
「じゃあ一人一本とってね、番号が書いてあるから」
そのくじにかかれている数字は15だった。……あれ、ちょっと待てよ? 確か演劇部って俺を抜かして十四人だったよな。俺を入れると十五人、じゃあ一番最後ってことに……。
まさか、まさか!?
「お、成松くんがオオトリね」
やってしまった。初挑戦でオオトリって、何でこういう時だけくじ運がいいんだよ俺は。プレッシャーが三割り増しになった。




