エチュード・イズ・ディープ(4)
「よし、それじゃあエチュードをするから、五分間自分の役柄を考えてね」
??? エチュード? 何だそれは……。
「すいません先輩、エチュードって何ですか?」
「エチュードって言うのはアドリブでするちょっとした劇のことだよ。一人ひとり自分のやりたいキャラを選んで壇上の人に向かっていくの。で、次の人が来たら、その人の役の調子に合わせて舞台裏にはけていく。最初の人と最後の人はプロローグとエピローグを作らなきゃいけないから、ちょっと大変かもね」
「なるほど……」
聞く限り、俺がするのは難しいってことだな。まあ初めてだから失敗しても許してはくれそうだが……。だが、できることならノーミスで完成したいよな。参考までに、先輩に役を聞いてみよう。
「先輩は何をするんですか?」
「私は、今日は吟遊詩人をやってみようと思うの」
「吟遊詩人ですか?」
「歌で、世界を歩き回ったヨーロッパの叙情の一つで、その歌に素晴らしい力があったって言われてるんだよ。今日はそれをマネてやってみるつもり」
「なるほど……」
なかなか先輩はひねっているな。まあ、あれだけおもしろい作品が書けるのだから不思議ではないか。しかし、どうすればいいものか? 俺にでも演じれる役ってなると相当限られてくるだろう。高校生……てのは駄目なのかな?




