エチュード・イズ・ディープ(1)
気付いた時、六校時が終わっており、放課後となっていた。
「おっ、やっと起きたか」
目の前には亮太が俺を覗き込んでいた。
「お前午後の授業からずーっと今まで寝てたんだぜ? 一体昨日何してたんだよ」
ああ、そうか。昨日は予想通り一睡もできなくて、午前中はかろうじて耐えれたが、午後は力尽きて寝ちまったのか。
「ああ、先生たちはお前の日頃の頑張りに免じて、今日だけは許してやるって言ってたぞ。でも、次はやばいかもしれないから、気をつけろよ」
日頃真面目に取り組んでいるように見えててよかった。うん、もう徹夜はやめたほうがよさそうだ。記憶が飛ぶことはおろか、下手したら死んでしまう。
っと、こんなことしてる場合ではなかった。今日から演劇部で練習だったんだ。いきなり遅刻では、さすがに面目ない。俺はささっと荷物をまとめ、カバンに押し込んだ。
「お? 帰るのか?」
「いや、演劇部に用があってな」
「演劇部? お前が? ……おっ、分かったぞ」
「な、何だよ?」
「お前、アンケートで一位になったんだな?」
「な、何で分かった?」
「薄々そんな気がしてたよ。そうかそうか、やっぱりお前が一位に決まってるよな。誰が見ても分かるそのアイドルばりの甘いマスク、全く羨ましいぜ」
「た、たまたまだろ、たまたま」
「これがたまたまだって言ったら、地球に隕石が当たって人類が滅亡することも必然になるぞ。いい加減自分の面の良さを認めろって。じゃねえと、世界にいる男子全員を敵に回すことになるぞ」
……返す言葉がない。
「とりあえず、いい劇になるように頑張れよ、一応期待してやっから」
「あ、ああ」
「ほら、分かったら行け。急いでんだろ?」
「ああ、そうだった、じゃな」
俺は一目散に体育館へと走った。




