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突然のオファー(16)
「そろそろ戻りましょう、じゃあね成松くん、明日、ここで待ってるから」
「あ、はい分かりました」
「じゃあ、一先ず解散」
先輩たちは帰っていった。
俺も教室に帰ろう。よく考えたら次は移動教室だ、急がないと。
と思い、走り出そうとした時、
「成松くん」
先輩たちと一緒に帰ったと思われた先輩がそこにはいた。どうしたのだろう? もう授業も始まるってのに。
「どうしたんですか?」
「うん、ありがとね。了承してくれて」
「いえ、改まらなくてもいいですよ、全然」
「うん、ちょっと安心しちゃって、男の子ってあんまり得意じゃないんだ、私。だから、成松くんが承諾してくれてよかったなって」
ああ、そういうことか。だからあんなに俺に……。そうだよな……当たり前か。納得している反面、少し落胆している自分がいた。
「分からないところがあったら何でも言ってね。できる限り協力するから」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ、私はこれで、明日また会おうね」
「はいそれじゃあ」
先輩は何度かつまづきそうになりながらも、転ぶことなく体育館を後にした。
ふう、俺でよかった、か……。




