突然のオファー(13)
「…………」
何故俺が出演することで=成功と言う公式が出現するのだろう。
それより、どうすればいいのだろうか? 正直、個人的には失敗&恥はかきたくないのであまり乗り気にじゃないんだが……。しかし、ここまで懇願してくれるって言うのに、断ったりしたら俺、ものすごく悪人ランクの順位が急上昇してしまいそうだ。それに、俺が出演しなかったら、もしかしてその演劇自体が中止になってしまうのだろうか? それはまずい、激しくまずい。でも、ちょっと待て。何故? 何故ゆえに俺が主役なんだ? 脇役ならまだしも主役だぞ? 中心となる役柄、主人公。それを何故、演劇のセンスなんてあるかも分からない俺にやらせるなんて……。自分で言いたくはないが、俺はただ本当に演技を見せるんじゃなく自分を見せるだけになってしまう。
高校二年になって初めてといえるほど深く深く俺は考える。
「成松くん、お願いできないかな?」
何と本村先輩までお願いしてきた。
「無理矢理こんなこと言っておいてなんだけど……やってみなくちゃ上手い下手はわからないものだよ。成松くんはやればできるって私は思ってる……」
「ですけど……」
「大丈夫、誰だって最初はそうなんだから。だからチャレンジしてみない? やってみると演劇って楽しいものだよ? 始める前からあきらめちゃうのは、やぶさかなんじゃないかな?」
「先輩……」
「成松くん、綾音がここまでお願いしてるのに、断れるの?」
「お願い、演劇部に復興のチャンスを」
「慈雨を、ください……」
……………………。
…………。
……。




