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突然のオファー(12)
「そうやって私たちのことを気遣ってくれる心、ますます気に入っちゃったわ。是非私たちの演劇に参加してちょうだい」
「だ、だから俺は――」
「大丈夫、演技力なら問題ないわ、声も通ってるし、何より言葉にキレがあるわ」
「ノープロブレム……」
ど、どうすればいいんだ? この状況。と言うより何故先輩たちは退いてくれない。探せば俺よりいい奴なんて山ほどいるはずなのに。そこまで俺に執着する必要性は……。
「どうしてそこまで俺にこだわるんですか?」
「だって、作品の主人公の性格、成松くんにそっくりなんですもの」
「主人公……主人公~!?」
「そう、冷静沈着で腕の立つ優秀な男」
「だったらなおさらやるわけにゃいきません。素人に主人公やらせるなんて無謀にもほどがありますよ」
「大丈夫、一ヶ月もあるんだから、みっちり鍛えてあげるわ」
「だとしたって……」
「やる前からあきらめちゃダメよ~、私たちはあなたには才能があるからそう言ってるんだよ?
それに私たちは劇を成功させたいからあなたにお願いしてるんだから」




