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突然のオファー(6)
「まあ、全否定ってわけじゃないから気にしなくていいけどよ。ただ昔あったトラウマはなかなか断ち切れないんだってことだけ頭に入れてくれりゃそれでいい」
「なかなか断ち切れない……か」
「だからよ、先輩とは仲良くしてやれ。初めてできた男の後輩だろうからよ」
「初めては大げさじゃないのか?」
「いいんだって、先輩はきっと初めてのはずに決まってる。今まで二学年の所に顔出したのなんて、お前を呼びに来た以外なかったんだぞ?」
「は? それマジかよ?」
「マジもマジだ」
まあ、リスクなんて欠片もなさそうだし、もとからそうしたいと思ってたしな。よし、俺は一つ気合を入れた。
キーンコーンカーンコーン。
ちょうどベルが鳴り響いた。
「お、やべやべ、席着こうぜ」
「ああ」
席についた俺だが、俺の頭の中では、亮太の言っていた言葉がリフレインしていた。過去のトラウマはなかなか断ち切れない。何故かずっと耳に残り続け、しばらく離れることはなかった。