突然のオファー(5)
「俺が思うに、先輩はそれを治そうとしてるんじゃないのか? 実際問題、結構酷いみたいだしな。ずっとそのままにはしておけないだろうって、本人は思ったんじゃなのか?」
「うーん」
「俺が先輩であればそうしてると思う。いつまでも苦手なものを苦手のまんまにしてちゃ、きっと後々大変だろうからな。ましてや男嫌いだったらなおさらだ。この世界に二つしか存在しない性別の片方を苦手にしてたら、この先辛くならないわけがないからな」
「……なるほど、それも一理あるな。でも、俺は違うと思うぞ」
「え?」
「確かに雄慈の言うことも分からなくはない。でもよ、男嫌いになるってことはよ、それだけ心から離れないひどい惨劇が本村先輩の身に起こったってことなんじゃないか? そんなことをした奴らを、お前は許せるか?」
「…………」
「俺だったら許せないな。そんな仕打ちをした奴らなら、徹底的に嫌うだろう。まあ、さすがに先輩はそこまで考えてはないだろうけどな。とにかく、俺はそう思う、どうだ?」
亮太が言うことは最もかもしれない。確かに、さっき俺はああいう風に述べたけど、それは意気込みみたいなものであってきっとすっぱり割り切ることはできないだろうし、ましてやひどい仕打ちを受けたのだとしたら逆に忘れることなんてできない。俺が言ったことは、きっとただの綺麗事にすぎない。




