ふれあい・イン・ショッピングモール(15)
「真綾、そろそろ行くぞ」
「あ、うん、分かった~」
そう言うと真綾はとことこと走り出し、今日の朝のように俺の胸元に飛び込んできた。俺はそれをしっかりと受け止める。ふむ、やはり三割り増しは間違いじゃないようだ。それにしても、真綾は歳の割りに聞き分けがいいよな。このくらいの歳の子であれば嫌だとかもっと遊ぶとか帰るのやだーとか駄々をこねても不思議じゃないが、真綾は一回呼ぶだけで何も言わずに俺のところにやってきた。他の子よりも人懐こい性格ではあるけど悪くないしな。これも先輩のしつけの賜物かもしれない。
「えへへ、お兄ちゃんって暖かいんだね」
「そうか? 自分ではよくわかんないんだけどな」
「うん、お兄ちゃんも綾音お姉ちゃんと同じだね。優しくて思いやりがあって」
う……そんな先輩と似ている目で見つめられると……意識しなくても顔が赤くなってしまう。
「? どうしたの?」
「い、いや、何でもない。それより、お姉ちゃんのところに行くぞ」
俺は真綾の前に指を三本差し出した。何故三本か、それは真綾の手がまだ小さく、五本握るには窮屈そうだからだ。俺なりの心遣い、だな。
「うん」
真綾はうなずき、俺の指を握った。
俺たちは先輩の元へと向かった。




