細やかなプレゼント パートⅡ(9)
そしてそれから二時間ほど、俺は校門の前で先輩を待っていた。決まってる、先ほどのことを謝るためだ。
――来た、先輩だ。俺はばっと前に飛び出した。
「せ、先輩、すいませんでした」
「成松くん?」
「本当に、すみませんでした。好きなだけ殴ってください。俺は、男として最低のことをしてしまいました。だから……」
「……本当にいいの?」
笑止、あんなひどいことをして殴らずにいられようか、いやいられない。殴って悪いはずなどない。もはや死んで詫びる覚悟もある。それくらい今の俺は、謝罪の気持ちでいっぱいだった。俺は目を閉じ、意を決す。
次の瞬間――。
コン、と。ものすごく弱い力で頭を小突かれた。
ゆっくりと目を開けると、ニッコリ笑っている先輩の姿があった。えっと……今ので終わり? もしかして俺が屈むの忘れたせいで力が入らなかったのか?
「えへへ、怒ってなんかないよ」
「え?」
「怒れるはずないよ、だって、あれは三人の冗談だったんだから」
「じ、冗談?」
「うん。実は成松くんが行った後、三人が『嘘だよ~』って言ったの。私たちのことを分かっていてからかってたみたい」
俺は人生最大のため息を吐いた。普通に誤解されなかったことへの安心感と、三人の先輩にも節度はあるんだなという事実の二つで構成されていた。




