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混沌の中で見たもの(9)
そこは病室のようで、目をこらすとそこには真綾の姿があった。真綾は何かを手に握っているようだ。
あれは……アメか?
真綾は独り言のようにしゃべりだす。
「お兄ちゃん、私ね、あの時お兄ちゃんがいじめっ子から助けてくれた時にもらったアメ、今もずっと舐めてるんだよ。だって、このアメは、お兄ちゃんと出会えた大切な味だから。お兄ちゃんと出会わなかったらわたし、ずっとうじうじしてたままだった。お兄ちゃんと出会わなかったら今のわたしはなかった。
……お兄ちゃん、死んじゃやだよ、また笑って、わたしにアメを分けてよ、お願い」
その純粋な想いは矢に姿を変え、俺の胸へと突き刺さった。そうか、そうだよな、俺、お前とも約束してたよな。
サンキュー、真綾。
これじゃあ、お兄ちゃんって呼んでもらう資格ないよな。
「さあ、次で最後だ」