混沌の中で見たもの(2)
ふむ、行けども行けども変わらない風景。それに、猫一匹発見することもできない。
「おーい、誰かいないのかー?」
俺は声を出して叫んだ。だが……返事はなし。それどころか自分の声すらも返ってこなかった。何だか何かに吸い込まれてるような、そんな感じだった。
俺は少し心細くなった。それに、ここから出たいという感情が表れ始めた。当たり前か、こんな人も風景も無いような場所に誰が居たいと思うかって話だ。何故だかここでも暮らしていけそうな感じはするが……だとしてもこんなところに長居したくはない。
「おーい、誰かー、いたら返事してくれー」
俺はもう一度叫んでみた。今度は目一杯。
……だが、やはり先ほどと結果は同じだった。
くそ、何だっていうんだよ……。
――その時だった。
「雄慈郎」
何処からか、俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。ん? 誰だ? 誰かいるのか? そう思い、耳を澄ましてみる。
すると――、
「雄慈郎」
また同じような声が聞こえた。それに先程よりもはっきりとしたもの。
間違いない、誰かいる。そして、俺のことを呼んでいる。俺からも叫んでみた。
「誰かいるのかー、いたら返事してくれー」
その時だった――。
この空間には一切無かった光がバアっと表れ、同時に一人の男が姿を現したのだ。どっかで見たことあるような格好をしている。
とにかく、俺よりも年上そうなので俺は敬語を使って尋ねてみた。