当日……そして……(8)
私は意を決して部屋をノックした。
しばらくすると、中から天内プロデューサーが出てきた。
「こ、こんにちは」
「やあ、来てくれて嬉しいよ」
「い、いえ、こちらこそ呼んでくださって嬉しいです」
「さ、中に入ってくれ」
私は少し緊張しながらも中へ入った。事務所のわりには随分とひっそりとしていた。私たち以外の人たちの声が聞こえない。
「あの、他の職員のかたはいらっしゃらないんですか?」
「ああ、皆帰らせたよ。君と一対一で話したかったからな」
そう言いながら、何故か天内プロデューサーはがちゃりと部屋の鍵を閉めた。
え? どうして鍵を? よく意図の掴めない行動に私は動揺を隠せない。
その時、私の心臓が大きく跳ね上がった。そして、ひどい寒気を背筋に感じた。これは、私が感じる悪い感覚だった。私は自他共に認める男の子が苦手な女。それ故、男の人に対しての人見知りはものすごく激しい。なので、いつしかそれを心臓の鼓動の速さでわかるようになっていた。今の状態は……とても怖い、今すぐにでも逃げ出したい、そう自分の中の自分が言っていた。
落ち着きなさい、私。初めて会った時のことを忘れたの? すごくいい人だったじゃない。きっと私の思い過ごしよ……大丈夫、大丈夫。
だけど、そんな思いはすぐに壊されてしまう。
「さて、早速審査を始めようと思うんだが……脱いでくれないか?」
「え?」
私はぞっとした。何? 何で? 言ってることがおかしい。演劇の審査をするのにどうして脱ぐ必要があるの?
「どうして、脱ぐ必要が?」
「当たり前じゃないか、審査するからだよ」
「演劇の評価をするのに、体は必要ないんじゃ……?」
「分かってないな、君は。最近の演劇の舞台とは、プロポーションもそれなりに求められるのだよ」
嘘だよ、そんなこと、他のプロデューサーだって一言も言ってない。心に響く声と演じきる心があればいいってしか他の人は言わない。
その時――、