当日……そして……(7)
「それに……こんなこと言いたくはないんだけど」
里野先輩は少し渋い顔をしながら口を開いた。
「最近、プロデューサーの不純行為が多発してるのよねー。多分、天内プロデューサーはそんなことないと思うけど……」
その不安は俺も持っていた。何を隠そう、朝それに関するニュースをパソコンで見たばかりだからだ。あの礼儀正しかった天内プロデューサーのことだから万が一はないと信じてるんだが……。
「大丈夫ですよ、きっと」
拭いきれない不安を、俺は言葉で掻き消そうとしていた。今そんなことを心配しても仕方ないじゃないか。確かに不安はあるけど、きっと思い過ごしで終わるはずだ。
「綾音先輩は人を見抜く力がありますし、特に男は」
「……うん、そうよね」
里野先輩はうなずいた。
「私の考えすぎよね。いざとなったら成松くんが助けてくれるだろうし」
「え、ええ、もちろんです」
「ふふ、なら安心ね」
「……あ、そういえば――」
俺は多少強引に話題を変えた。こんな湿っぽい話はやめたほうがいい、早く忘れるに限る。きっと、俺たちの思い込み、そうに違いない。俺は自分を納得させた。だが、それでも胸に少しざらざらした感覚は残っていた。