当日……そして……(6)
「歌っていうのはね、歌い方によって人の心がよーく表れるのよ。何故なら心を込めなきゃ歌は歌えないでしょ? 例えば、綾音は思いやりのある子で、真綾ちゃんは明るい元気な子。美子は誠実で、響は理知的。そんな感じでいくと、成松くんの歌声からは優しさが伝わってくるのよね。誰にもまねできないような透き通るほどに綺麗な優しさがね」
「うーん、乱暴、っていうなら分かるんですけどね」
「そんなことないわよ。それは自分だからに違いないわ」
「そう、なんですかね?」
「そうなのよ」
「……ありがとうございます」
世間の目ってつくづく違うんだな。
「ふう、そろそろ着いたかしらね、綾音」
俺はちらりと時計を見る。先ほどから三十分ほど時間は経過していた。あの場所から十五分くらいって聞いてたから到着しててもおかしくない。
「そうですね」
「うまくやってるかしらね、あの子」
里野先輩が心配そうにつぶやく。
「あの子、こういうことには不慣れだからなー」
「演劇はしっかりとこなせるんだけどね……」
「それは、みんな一緒にするからでしょ? 一人じゃないからガタブルしないだけよ。でも、今回は一人でしょ? まして相手は男性のプロデューサーだし……ちょっと心配しちゃうわね」
うーん、難しいところだな。