Let's action!(19)
「失礼するよ」
そう言って一人の男の人がドアを開いた。誰だ? この人。そんなことを考える俺だが、みんなはすごくびっくりした顔をしていた。何故なら……。
「あ、天内プロデューサー」
そう、亮太や先輩たちが言っていた、最近売れ始めたプロデューサーだったのだ。人の能力を見抜く力が他の人よりも優れており、それを高める能力も持っているらしい。
「すまないね、突然押し掛けてしまって。君たち演劇部の演劇を見せてもらったよ。なかなか見応えのあるものだった」
「ありがとうございます、そのようなお褒めの言葉」
「おお、もしかして君が本村くんかな?」
どうやらプロデューサーは朱音先輩に用があるようだ。
「は、はい、そうですが?」
「いやあ、君たちの演技を見せてもらったんだが、君が一番上手だったんだ。だから、一度会っておきたかったのだよ、声の透明度、迫力、動き、どれをとっても素晴らしかった。感動したよ」
「え? あの、その……」
喜びと、あまり男の人に慣れてないのが混ざり合って、綾音先輩は慌てている。
「どうだね? 私の事務所に一度来てみないか? 喜んで歓迎させてもらうが?」
「え? ほ、本当ですか?」
なんと、綾音先輩の演技が天内プロデューサーの目に止まったようだ。
「ああ、もちろんだとも、君は上で試してみる価値がある。どうかね?」
「は、はい、よろこんで」
もしかしたら、このままプロの演劇役者になってしまうかもな。
「では一週間後、この場所に来てくれないか? 待ってるよ」
さわやかな笑顔を残し、天内プロデューサーは去って行った。
その瞬間、みんながどっと騒ぎ出した。無理もない、プロに力を認めてもらえたんだから。各言う俺もはしゃいでいた。こんな時に騒がずしていつ騒ぐのだ。先輩のことなのに、まるで自分のことのように嬉しかった。