Let's action!(9)
「単純なことよ、初めて交える相手の動きを詮索せんとするのは当然のこと。パターンを読み取り、クセを見切り、弱点を見出す。それが戦闘のセオリー。どちらが先に相手の動きを見切れるかにより、勝敗も自然と付いてくるだろう。実に当たり前のこと。それをせずして勝負に勝とうなど、無理に等しい。しかし……それをしたところで我には無意味だ。何故なら――」
「くっ……」(レ)
「我にパターンなどいうものは存在せんのだからな」(ゼ)
「な、何だって?」(レ)
「地上界の衆生などと一緒にされては困るのだよ。我は暗影の神、色で言うなれば黒。黒とは無、何も映し出すことはない。故に、パターンなどと言うものは存在しない。全ては我の思いつくがままに何事も進むのだ」(ゼ)
「くっ……」(レ)
「試してみるか?」(ゼ)
ゼルベクトは目をつむり、呪文を唱える。(ナ)
「サンダーブラスト」(ゼ)
「く、ガーディング・サンクチュアリ」(レ)
「まだまだ、ファイアーデストロイ」(ゼ)
「こっちだって、アクアリングシールド」(ロ)
途端に水柱が舞い上がり、四人を抱くかのように包み込んだ。
「こざかしい、アイスエッジ」(ゼ)
「まだ、双竜打ち」(エ)
今度はゼルベクトが放った無数の氷の刃を、エリアルが縄で振り払った。(ナ)
「ふっ、ならばこれはどうだ? デスプレセントフィーリング」(ゼ)
刹那、四人の周りを黒い霧が覆った。そこから液状の物体が次々と生まれ始める。(ナ)
「霧とは、人を惑わす恐怖に成り得る。お前たちはそれを振り払うことが果たしてできるか?」(ゼ)
「くっ、みんな、ここは私が」(ミ)
ミルドは一歩前に出た。(ナ)
「見せてあげるわ、ベーヌランケイスト家に伝わる必殺の防を」(ミ)
ミルドは背中から矢を数本抜き取り、矢尻を合わせる。(ナ)
「秘技・鷹の目」(ミ)
そう叫び、ミルドは矢を放った。意志を持つように動くそれは、本物の鷹がごとく中を舞い、凄まじい突風を巻き起こした。霧は吹き飛ばされた。(ナ)
「ふっ、愚かよの。早々と自らの秘技をばらすとは……、我はまだ半分も力を発揮しておらぬのだぞ? 判断のミスにも程と言うものがある。知っておるぞ、その技は、体への負担が大きいことを。我が今の技を使うたびにそれを使用せんとするなら、後二回も使えば倒れるであろう」(ゼ)
「くっ……」(ミ)