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前日の想い(6)
「えへへ、ありがとう」
綾音先輩はそう言ってほこっと微笑んでくれた。
「私もだよ、あそこで雄慈郎くんを引き止めて本当によかったと思う。じゃなきゃ、こうして一緒に歩いてられなかったかもしれないしね」
「そうですかね? 俺はそうは思いませんけど……」
「え? どうして?」
「だって俺、綾音先輩がお礼だって言ってマウスパッドくれた時には、すでに綾音先輩に惹かれていた気がしますから。演劇をやらなかったとしても、綾音先輩のところに会いに行ってたと思いますよ」
「それは、今だから言えるんだよ。雄慈郎くん、そんなに押し強くないでしょう?」
「ぐっ、鋭いですね」
「えへへ、だって彼氏のことだもんね」
茶目っ気たっぷりに綾音先輩はそう言った。その笑った顔は、まるで妖精のようなかわいさだった。こんな人が彼女なんだなって思うと、改めて俺は幸せな気持ちになった。
絶対に成功させよう、そんな気持ちが高まった。
「明日、頑張ろうね、綾音先輩」
「うん」
ここにきてモチベーションが上がった俺たちだった……。