前日の想い(2)
「ああ、それなら三日前から知ってたわよ」
「え? そうだったんですか?」
「ええ、顧問の先生から教えてもらってね」
「サプライズ……」
いや、それなら俺に教えてくれてもよかったのでは……? それとも、俺が緊張しないための配慮か? まあいい、気にしないことにしよう。
「でもこれはチャンスよ。我が演劇部の知名度アップにもなるし、うまくいけばプロデューサーの目に止まってプロへの道にもつながるかもしれないじゃない」
「確かにそうですね、有名なプロデューサーらしいですし」
「天内プロデューサーよ。最近は色んなメディアで活躍してるらしいわ。才能を見抜くこともできるらしいし」
「じゃあ、俺は無理確定ですね」
「それは分からないわよ、もしかしたら成松くんにもその才能があるかもしれないわよ?」
「いやいや。もしそうなっても、俺は綾音先輩を進めますよ。俺なんかより歴も長いし上手だし」
「まあ、嫌でも綾音の実力は認めざるをえないでしょうね。ふふ、それにしてもラブラブね、成松くんと綾音は」
「私もこんな彼氏がほしいわね」
「うらやまシス……」
「そ、それはもういいです。練習しましょう、練習」
「ふふ、照れ屋なのね、成松くんは」
「まあ、そこがいいんだけどね」
「花も実もある……」
本当にかなわないな、この先輩たちには。まあユーモアに溢れておもしろいから文句はないが……。
俺は部室へと入り、重たいメイルを着用してステージへと向かった。
「そういえば、綾音先輩の姿が見えないんですけど、何処かに行ったんですか?」
「ふふ、ちょっと待っててね」
そう言うと、高宮先輩は向こうにあるもう一つの部室へと向かった。
そして待つこと五分。
「はーい、お待たせー」
俺は、その光景に見とれていた。
何故なら――、