前日の想い(1)
発表会を前日に控えたこの日は、先日に行ったテストの成績が返却される日でもあった。結果、俺は学年では
14位、クラスでは4位という成績だった。ふむ、まあまあだな、前より二つほど順位も上がってる。次は一桁を目指して頑張るとしよう。明日に向けての弾みにもなった。
「雄慈ー今回は何位だったよ?」
亮太は来るや否や俺の成績用紙を手に取った。
「げ、また順位上げてやがる。ここまで上にいて尚順位を押し上げるとは……お前本当にすごいな」
「お前は何位だったんだよ」
「うん……142位だよ」
「何だ、上がってるじゃないか」
「確かにそうだが、追試があんだよ、追試が。それに上がった理由は、理数系のテストの難易度が高かったらしくて、平均点ががた落ちしたおかげさ。だから、素直に喜べないんだよな」
「でも、上がらなかったよりはいいじゃないか」
「けっ、簡単に言いやがって。確かにお前には言う権利はあるけどな……お前、これから何かあるのか?」
「あるよ、明日に備えてのリハーサルが」
「ああそっか、明日だもんな。まあ頑張れや、主役なんだろ?」
「ああ」
「あまり緊張すんなよ。少しくらいのミスならみんな目ぇつぶってくれるって。特に女子なんかは演技よりお前を見るだろうし」
「その話はもういいって」
「はは、照れんな、照れんな。あ、そういえばお前、この話知ってるか?」
「何だ?」
「実は明日の演劇に、偉いプロデューサーがお前らを見に来るらしいぜ。何でも結構テレビ業界でも有名な人らしいんだが……すまん、名前が思い出せねぇ」
「いいよ、別に」
プロデューサーか、いい人材を探しているんだろうか? 確かに先輩たちのレベルは相当なものだから、ひょっとしたらそれなんだろうか? とにかく、俺にはあんまり関係ないか。俺はただ、ミスをしないように気を配るのみだ。ここまできたからには、大成功で幕を閉じたい。
「じゃあ、俺行くな」
「ああ、頑張れよ」
俺は足早に体育館へと向かった。今の亮太の話を伝えといたほうがよさそうだ。