密室~隠れ鬼パニック~(15)
「雄慈郎くん」
先輩が俺の元に駆け寄ってきた。
「大丈夫? ケガ、してない?」
「はい、何とか、はあ……はあ……」
人間やはり追い込まれると力を出せるもんだな、つくづくそう思った。
「先輩は、何ともありませんか?」
「うん、私は全然。雄慈郎くんが庇ってくれたから」
なるほど、取り用によってはそう解釈もできるのか。よかった、理性に打ち勝つことができて。
二人で安堵の息をついていた時だった。
「あー、やっと見つけた」
振り向くと、そこにはかくれんぼの鬼だった里野先輩がいた。そういえば、まだ俺たち見つかってなかったんだ。今までのことですっかり忘れかけていた。
「一体何処に隠れてたの~? 見つけた人と総出で探してたのに」
「あ、ああ。ここです、倉庫」
「そんなところに……ニアミスだわ。最初に調べておけばよかった……それにしても、何だか疲れてるみたいだけど、何かあったの?」
「ええ、ちょっと……」
「うん、でも何ともなかったから」
「そう? ともかく、あなたたちが最後ね。おめでとう」
「や、やった!」
「ふふ、珍しいわね、成松くんがそんなに喜ぶなんて」
自分でもびっくりするほど喜んでいた。まあ、あれだけ試練をかいくぐってきたから当然か。勝利の嬉しさを改めて感じた俺だった。
余談ではあるが、俺たちがあまりにも長い間隠れていたせいで、その後の部活時間は大幅に削られてしまったのだった……。