密室~隠れ鬼パニック~(13)
「綾音先輩、さあ、通って」
「う、うん」
言われるがままに、綾音先輩はハイハイしながら、倉庫の出口へと無事辿り着いた。先輩が小柄であった。大きかったら引っかかっていたかもしれないからな。とりあえず、助けられて何よりだ。
さて、問題はここからだ。言わなくても分かるだろう。俺の脱出方法についてだ。言ってしまえば一言で終わる。
――ない。色々考えてはいたんだが、見事に何もなかった。と言うより、思いつくはずがないんだ。ずっとあんな体勢だったもんで、それを打破することに精一杯でさ。これは実際同じ状況に陥ってみれば分かるだろう、うん。
んなこと言っている場合じゃなかった。現在の俺の状況は背中に八台くらいの卓球台が乗りかかっている。決して力自慢コンテストではない。正直、支えていられているのが奇跡と言ってもいい。この奇跡が続いてる今のうちに何か策を講じなければ。ないなんて言ってられないんだ。
ゆっくり下ろして先の状態に戻す? いや、それじゃあ根本的解決にはなってない。じゃあ一か八か左に体をずらしてみるか? ……無理です、そもそもずらす隙間がありませんでした。