密室~隠れ鬼パニック~(9)
「綾音先輩」
「何?」
「場所を変えましょう。きっとこの場所もすぐに見つかりかねないので……」
「うん、分かった」
そう言って俺の元に歩き出した――その時だった。
「きゃっ!?」
先輩はバランスを崩して後ろに倒れそうになったのだ。
「綾音先輩!」
俺は綾音先輩に手を伸ばした。それに何とか掴まった先輩だったが、それがいけなかった。あまりにも倒れすぎていた状態で俺の手を掴んだために、俺の引っ張る力が負けてしまって、支えようとした俺が、逆に先輩に引き寄せられてしまったのだ。
それだけじゃない。その時にバランスを崩した俺は、卓球の台に足を引っ掛けてしまい、それがまるでドミノ倒しがごとく、俺たちの倒れている場所に覆いかぶさるように崩れてきたのだ。
あまりに突然の出来事。うろたえまくっていたが、とりあえずケガだけはせずに済んだようだ。
「だ、大丈夫ですか? 先輩」
「う、うん。私は平気。雄慈郎くんは大丈夫? 何だか背中に……」
「はい、卓球台が均衡保ってるみたいなんでなんとか。でも……」
この体勢は非常にヤバイ気がするのは俺だけか? 端的に言うなれば、俺が綾音先輩の上に覆いかぶさっている状態だ。正直卓球台が倒れたことより、こっちのほうが俺にとっては大丈夫じゃない。何とかして脱出を計りたい。