密室~隠れ鬼パニック~(8)
「よし、これで最初に見つかることはなさそうですね」
「うん、作戦成功だね」
俺たちが何処に隠れたかというと、ステージからほんの少し離れた体育館倉庫に身を潜めている。俺にしてはよくここを思いついたものだ。里野先輩も、こんな近くに隠れないと思ったようだ。まさか近場に隠れるわけないだろうという浅慮を抱かせておいてそこに隠れる。相手の深層心理をついた悪賢い技だ。正直、里野先輩に通用するかって言ったら、不安はあったけどな。
「よく思いついたね雄慈郎くん。今まで何度もかくれんぼやってきたけど、ここに隠れるのは初めてだよ」
「昔、俺も結構かくれんぼして遊びましたからね」
昔、俺はちょこまかと動き回るのが好きで、相手を撹乱するのが得意だった。故に、かくれんぼでもなかなかの勝率を保っていた。おかげで町内で開かれたかくれんぼ大会では準優勝をしたこともあった。ちなみに、その時の一位は、マンホールに身を潜めていた亮太だった。
「へー、そうだったんだ」
「はい、この歳になってそれを活かせるとは、思いもしませんでしたよ」
「あはは、予想外だったわけだね」
「はい。そういえば、この遊びってそんなに前からやってたんですか?」
「うん、私が入りたての頃にももうやってたね。仕切ってたのは当時三年の先輩だったね」
「歴史があるみたいですね」
「そうだね、たまにやると盛り上がるしね。雄慈郎くんはどう? 楽しくない?」
「え? ああ、何だか童心に返った気がしますよ」
「そっか、よかった」
そんな話をしていると約十分ほど経過した。うーん、知性が光る里野先輩ことだ高宮先輩、大城先輩は見つかってないとしても、半分くらいは見つけてしまったんじゃないだろうか? うーん、そうだとしたら最後まで生き残りたくなるよな。気がつけば血が騒いでる俺がいた。ここもきっと見つかるのは時間の問題だろう。だが、今ここは俺たち以外には誰の気配も感じない。だとすれば、場所を変え、一度探したと思われる場所に隠れるのが生存タイムを伸ばす最良の策だと思われる。