170/247
密室~隠れ鬼パニック~(2)
「はい、雄慈郎くん」
「あ、ありがとうございます」
綾音先輩がお茶を手渡してくれる。
「あれ? 今日はお菓子もあるんですか?」
「え、これ? ちょっと家で作ってみたんだ。スコーンなの、よかったら食べてみて、みんなも」
口々に部員は先輩に返答し、そのスコーンを口に運んでいく。俺も一緒になって一ついただく。
――うん、これは。ほのかに甘みがあってそれでいてしつこくなく舌触りもいい。お茶を口に運べば口の中に残った甘さがぱっと広がって口中をさやわかにする。
「どうかな?」
「これは、かなりうまいです。絶品ですね」
「本当? 粉っぽくない?」
「はい、全く。店で出しても違和感ありませんよ」
「よかったー、みんなはどうかな?」
どうやらみんなのコメントも良好なようだ。
「本当に綾音はすごい腕ねー。パティシエにでもなったら?」
「ううん、趣味で作るからいいんだよ、こういうのは」
「うーん、そんなものかしら」
「そうよ」
「綾音は、多芸に秀でる……」
確かに、パティシエもかっこいいとは思うが、やっぱり劇をしてる綾音先輩のがしっくりくるな。完全に個人的な意見だけど。