ビラ配り奮闘記(21)
そう言って学校を出て、肩を並べて歩いていたんだが、会話は特になかった。別に気まずいってわけではない。むしろ気心知れた仲良いカップルって雰囲気を醸し出してる感があった。ならこのままでいいじゃないかと思うが、さすがに会話がないのは寂しい。何か話題を……俺がそんなことを考えていると。
「さっきは、本当にありがとうね」
先に綾音先輩が口火を切った。
「まさか同じ子たちに襲われるなんて思いもしなかったよ」
「それはそうですね。俺もびっくりしましたもの。あれだけ口酸っぱくして言ったってのに…。あのガキ共」
「でも、さすがにもうそういうことはしないだろうね。半泣きしていたもの」
「あれで尚やろうとしたら、ある意味勇者ですね、あいつらは」
「ふふ、そうだね」
「にしても、どうして二度も先輩を狙ったんでしょうね?」
「うーん、何でだろう?」
綾音先輩は悩むポーズをしている。――少しからかってみようか?
「やっぱ、綾音先輩がかわいいから、ですかね?」
「ええ!?」
うん、やはり動揺してるな、もう少しこのまま……。
「あのガキ共、きっと先輩の魅力に魅了されたんだと思います、俺は」
「な、何言ってるの雄慈郎くん。そう言う滅多なことあるわけ――」
「ありますよ」
先輩が言い終わる前に俺はそう言った。