166/247
ビラ配り奮闘記(20)
「あーあー、熱いわねーお二人さん」
「そうねー、私たちはちょっと邪魔みたいだし、退いたほうがよさそうねー」
「フェードアウト……」
「じゃあ、私たちは帰るわねー」
「ごゆっくりー」
「アンダンテ……」
何やら意味深な発言を残して、三人は帰っていってしまった。何でか知らんが、俺の心臓はバクバクと音を立て始める。さっきだって二人きりだったというのに、どうして今になって鼓動が早くなる? うん、これはあの先輩たちの発言のせいに違いない。じゃなきゃ三人がいなくなった瞬間、ここまで早鐘を打つはずがない。落ち着けー、平静を保て。
「ゆ、雄慈郎くん?」
「は、はい?」
一体何だろうか? 変に鼓動が早くなる。
「わ、私たちも帰ろう?」
「え?」
「あの、早くしないと暗くなっちゃうしさ」
「あ、はい、そうですね」
正直馬鹿みたいだった。いや、馬鹿か……。