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ビラ配り奮闘記(19)
「私たちも見に行こうかしら」
「ええ、そうしましょう。期待できそうだもの」
「そのチラシ、いただけないかしら」
何と今回の一件を見ていた野次馬が、俺の救出劇に感動してしまったらしく、実際の劇も見てくれるかもしれないことになったのだ。藪から棒の出来事に驚いてる間に、チラシは全て手元から無くなっていた。
……三次元では絶対に有り得ないな。
「えー? そんなことがあったの?」
「さっすが成松くん。頼りになるわね、やっぱり」
「ナイト……」
今回の件にはさすがに先輩たちも少しびっくりしているようだ。少ししかびっくりしないって言うのもおかしい気がするんだけど……。
「ケガなかった? 綾音」
「うん、なんともないよ」
「そう、よかった」
「雄慈郎くんがやつけてくれたから」
「ふふ、よかったわね」
「うん」
「――だってよ? 成松くん」
「は、はい?」
「助けてくれてありがとうだって」
「あ、ああ。当然ですよ。か、か、彼女なんですから」
顔から火が出るくらい恥ずかしいことを口走った。でも訂正はしない。だって本当のことだからな。