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ビラ配り奮闘記(18)
その瞬間。
わあっと歓声が上がった。気がつくと周りにはたくさんの人だかりができていた。どうやら俺たちのやりとりは注目を集めてしまったらしい。
そんなことより。
「大丈夫ですか? 綾音先輩」
俺は外傷がないかを確認する。
「うん、大丈夫。また、助けてもらっちゃったね」
心が明るくなったからだろうか、先輩は前のようには泣かなかった。
「そうですか、よかった」
ひとまず、安心だな。と、そんな時。
「あの――」
一人の女の子がおずおずと尋ねてきた。
「あの、その、このポスターの人ですよね」
女の子がそれを広げながらそう言った。確かに俺が真ん中を飾るポスターが広げられている。きっと何処か違うポイントの部員にもらったのだろう。
「はい、そうですけど」
「今の、すごく感動しました。だから、劇頑張ってください、必ず見に行きますから」
そう言うと、女の子は恥ずかしがりながら行ってしまった。だが、始まりはそこからだった。