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ビラ配り奮闘記(15)
「離して、離してってば」
いつか会った中学生が私の手を掴んだ。
「暴れるなって。ちょっと一緒に遊んでくれるだけでいいんだからさ」(A)
「な、ちょっとだけ、ちょっとだけだよ」(B)
「嫌、君たち、前に雄慈郎くんに言われたじゃない。どうしてこういうことをするの」
「刺激がないからだよ。あんなこと言われたところでやめる気なんてさらさらねーよ。俺たちは悪行働いてるとは思ってねーし」(A)
「そうそう」(B)
「だったらなおさら嫌。離して!」
「離せるはずねーだろ、離したら姉ちゃん警察呼ぶだろ?」(A)
「俺たちに付き合えって。悪いこと言わねーからよ」(B)
男の子二人はぐいぐいと私を引っ張る。当然耐えることができず、私の体はずるずると後退する。
(雄慈郎くん、……)
私は心の中で何度も彼の名前を叫んだ。