ビラ配り奮闘記(13)
それからさらに一時間が過ぎた。さすがにブドウ糖だけではもはや持たないので。
「ちょっと休憩しようか」
近くのベンチに腰を下ろした。
「あ、私飲み物買ってくるよ、何がいい?」
「一緒に行きますよ?」
「いいよ、私だけで。何がいい?」
「――何でもいいです。綾音先輩にお任せします」
「うん、分かった」
先輩はとことこと自販機に駆けていった。
ふう、さすがにバテたな。携帯を開いて時刻を確認する。三時四十分、後一時間ってとこか。それにしてもかなり配ったな。五百枚くらいか? 最初に六百枚もらったから、そんなもんか。
まあそれもすごいけど、やっぱり今日は綾音先輩の発言のほうがびっくりだ。最近の綾音先輩は明るくなったと話したが、それにも増して発言が大胆になった。聞いてて分かったかもしれない。『こんな素敵な男の子が私の彼氏なんだ』とか『あなたがいてくれるから明るくなれた』とか。以前の先輩なら言うことがなかったであろう殺し文句を今は量産しまくっている。まあ、それは全くもってマイナスではないけどな。むしろ喜ばしいことだと思う。今までの先輩は少し、というかかなり控えめだったからな。明るく変わってくれるならそれに越したことはないし。