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ビラ配り奮闘記(10)
「甘くて、おいしいね」
「そうですね? よかった」
俺も一つそれを口に放り込んだ。何だかんだ言っても、正直俺も疲れていたからな。
「にしても、本当に込んでますね」
「うん、それに……男女二人組が多いね」
綾音先輩の言った通りだった。気付かなかったが、よく見ると大人や家族連れよりも、男女2人が肩を並べて歩いている数の方が圧倒的に多かった。
「デートなのかな?」
「うん、きっとね……」
そう言うと、綾音先輩はくすくすと控えめに笑った。
「どうかしたんですか?」
「ううん、別に何も。ただ、どの男の子よりも、雄慈郎のほうが格好いいなって思っただけ」
「な……」
な、何と言うことだろう。ついに綾音先輩までそんなことを言うようになってしまったのか? とにかく、否定しなくては。