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ビラ配り奮闘記(6)
「私も、身長欲しかったなー、後6cmあれば棚の上にも手が届くのに」
「そうですか? 俺は小さくてもいいと思いますよ?」
「それは雄慈郎くんが大きいからだよ」
「確かにそうかもしれませんけど、俺個人的には、綾音先輩はそのままの方がいいです」
「え? どうして?」
「何ていうか、その、そっちの方が魅力的だし、背丈がないのはー、その、アピールポイントだと思うんですよ、はい。それに、何つーか、守りがいがあるし」
自分の顔が茹でられた伊勢えび、みたいに真っ赤になっているのが体温で分かった。やはり恥ずかしいもんだなこれは。告白した時なんかこんなのの比じゃなかったんだろうが。それでもやっぱり慣れないな。まあ俺は不器用故、仕方ないことだが。
「えへへ、ありがとね、雄慈郎くん」
「いえいえ、当然ですよ」
「私の目に、狂いはなかったみたいだね」
「て、照れますよ、先輩」
「えへへ、さっきのお返しだよ」
こうして楽しくしゃべりながら、俺たちはチラシ配りに精を出していた。