ビラ配り奮闘記(1)
『今日は宣伝をしましょう』
発表会まで十五日を切った土曜日の部活、俺たちは必死に綾音先輩とチラシを配っていた。各七班に別れて、商店街、駅前、通学路、河川敷、住宅街、隣町、AとBと言う決められた場所で、俺たちはくじを引いた結果、商店街だったので、協力してせっせと仕事に精を出してみる。何故、突然チラシ配りすることになったか、多少予想を二周りするものだった。
「埋め尽くしたいのよ、あの文化ホールをね」
「文化ホール? 学校じゃなくてですか?」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「初耳ですよ」
「ああ、ごめんごめん。実はね、発表会当日に使用するはずだった。劇団ドーパミンが、スケジュールの都合で中止になったのよ。これはチャンスと思って使用してもいいのか交渉をした結果、見事許可がでたってわけなのよー」
「最高であそこのホールは約1000人も入るらしいのよ」
「よ、1000人ですか? そ、そんな大勢の目の前で演劇するんですか?」
「ええ、そうよ。私たち演劇部の名を世に広めるチャンスよ」
「でも、俺初めてなんですよ? 仮にも満席になったら、俺は立ってられないですよ」
「大丈夫、大丈夫、600人も1000人も大差ないから」