イノセント・スマイル(17)
「俺なんかのことを、そんな風に思ってはいけないんです。先輩には、きっと俺以上に気の合う男がいるはずですから。俺は、先輩の苦手を治すためだけの男なんですよ」
「成…松…くん?」
「だから、駄目ですよ」
「…………――!?」
先輩はベンチを飛び出し、何処かへと走っていってしまった。追いかけることはせず、俺はかわりにこう言った。
「亮太、先輩たち、いるんだろ? 出て来いよ」
そう言うと、亮太たちは若干顔を引きつらせながら、おずおずと俺の前へと出てきた。近くで見ると、四人は顔を蒼白にしていた。
「何で、あんなことを言ったんだよ」
信じられないとばかりに亮太はそんなことを尋ねてくる。
「答えてくれ、何であんなことを言ったんだよ。お前、先輩のこと好きだったんじゃなかったのかよ?」
「ありがとな、二人だけの時間を作ってくれて」
「質問に答えろよ!」
一際大きな声で亮太は叫んだ。
「何であんなことを言ったのかって聞いてんだよ」
「好きだからこそ、さ。先輩には、もっといい相手がいるはずだから」
「何だって?」
「知ってるだろ? 亮太も先輩たちも。俺は、女の子の接し方がうまく分からない。どう話したり、どう付きあっていけばいいのか、そういうのが分からないんだ。ましてや、先輩は男が苦手。俺みたいな奴よりも、もっと先輩のことを分かってくれる奴はいるはず、そう思ったからだ」
「だからって、だからってあんな言い方しなくてもいいんじゃないのか?」
「…………」
「先輩がどれだけ勇気を振り絞って言おうとしてたのか、考えることができなかったのか? お前、いつも気にかけてじゃねえか。先輩を傷つかせないようにって、なのに、お前――」
「うるせぇんだよ!」