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イノセント・スマイル(16)
「座ろっか」
「……はい」
俺たちは近くのベンチに腰を下ろした。
「今日は、すごく楽しかったよね」
「はい、そうですね」
「多分、早紀ちゃんたちだけじゃ、ここまで楽しくはなかったと思う。な、成松くんがエスコートしてくれたから、今日は、いつもより、楽しかったんだと思う。ありがとう、成松くん」
「…………」
しばらく沈黙が流れる。
「な、成松くん」
先輩がまたしゃべりだした。
「あの、あの、だ、大事な話があるの」
「…………」
「私、今まで色々と考えたの。恋って何なのとか、男の子がどうすれば喜んでくれるのとか。男の子が、私は苦手だから……。でも、考えても考えても答えなんて出なかったの。当たり前だよね。だって、今まで恋なんてしたことなかったから……。でも、今……私は……恋をしてるの。今まで気付かなかったけど、最近、自分の気持ちに気付いたの。だから、私、正直にいいます。成松くん、わ、私は、あなたのことが――」
先輩が今正に言わんとした言葉を、俺は手で制した。
「成松、くん?」
「駄目です、先輩」
「え?」
先輩は訳が分からないらしくただ呆けている。