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イノセント(6)
「ひらめき」
美子がポンと手をたたいた。
「何か思い浮かんだの?」
「こういうのはどうかしら? 演劇の途中にアドリブで告白するっていうのは」
「なるほど、それは有りね。あんまり緊張することもないだろうし」
「でしょでしょ、いい考えじゃない」
「ええ、でも一つ問題があるわね」
「綾音の演技がうますぎることよ」
「ああ、そっか、素人だったらアドリブなんて気づけないわね。でも、成松くんみたいな真面目な人なら、台本の台詞くらいみんな覚えてこないかしら?」
「まあ、そんなことはないけど、完全じゃないって言うのはちょっと厳しいわよね」
「そっか……」
「んー、難しいわね」
それっきり会話が途絶える。
そしてさらに熟考することしばし。
「ひらめき……」
今度は響がそう言った。