イノセント(1)
「聞いたわよー、綾音と一緒に本屋に行ったんですってねー」
「やっぱり付き合ってるんじゃないのー」
「疑惑……」
どこで聞いたのか、高宮先輩たちは何故か俺と本村先輩が本屋に行ったということを知っていた。とにかく、否定はしておかないと。
「そんなことありませんよ、ただ道でたまたま出会っただけですよ、ね? 先輩?」
「え? う、うん」
「本当に? 何も隠してないー?」
「隠してなんてないですよ、やましいことなんてありません」
「……成松くん、いつもより自信のあるしゃべりかたね」
「え? そりゃあまあ、何も悪いことはしてませんから」
自分の気持ちを振り切るため、なんて言えるわけがない。
「うーん、そっか。まあ成松くんは嘘がつけないもんね」
納得してくれたのか、三人は顔を合わせてうなずいた。
「よし、じゃあこの話は終わり。あ、そうだ成松くん。悪いんだけどコンビニでボールペン買ってきてくれないかな? 綾音が台本を少し手直ししたいらしくてさー」
「え? 私そんなこと言って――むむ~~」
「?」
「お金は後で返すからさ、お願いできるかしら?」
「はい、分かりました、何本くらいですか?」
「二本でいいわ、できれば極細のお願い」
「あ、はい分かりました。じゃあ行ってきます」
どうしたんだ? 先輩たち……。わずかな疑問を抱きながら、俺はコンビニへと向かったのだった……。