年上ヒロイン・綾音登場(9)
亮太が指を差す、教室が続く廊下を見てみる。
そこにはほぼ全員(教室外にいる)、女子が俺の方向を向いて顔を赤らめていた。
これって、俺の方を向いてるのか? 本当に。
「お前のこと見てんじゃねぇのか?」
「冗談、俺とお前っつったら、百人が百人みんなお前のほうに手を挙げるだろうよ。それよりどうだ? 納得したか?」
「偶然、じゃないのか?」
「偶然がそんなに続いたらそれはもう偶然じゃねえ、必然って言うんだよ」
「はあっ」
「それより、どうだ? 本村先輩」
「良いも何も。今日初めて会ったばかりで、そんなすぐに好感を抱けるわけないだろ」
「分かってないなぁ、雄慈は」
「何をだよ」
「自分の心に響く女の子だったら、そんなの関係なく一発でキューピッドに射抜かれちまうもんなんだよ」
「……一体どこでそういう変な情報を剥奪してくるんだ?」
「男なんて、そんなものだって言いたいだけさ」
「ふむ」
「でもよ、ホントにマジな話。俺はお前が本村先輩に似合ってると思うぞ? お前は俺には厳しいが、みんなに優しく振舞うことができるからな。それに何度も言うが、お前はアイドル張りの甘いマスクの持ち主だ」
「仮にそうだとして、すでに彼氏の一人ぐらい持ってるんじゃないのか?」
「それがなんといないんだよ、と言うより、みんな振られたんだとけどな」
「じゃあ、俺だってダメじゃないか、きっと恋人作らない主義者なんだよ」
「いや、違うと思うな俺は」
「?」