表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/40

【第9話・買出しにいってみようか】

 

 「さて・・・と、そろそろフードを被らんとな。」


 私の隣で、ひょんなことから、共に旅をすることになった、レーベンが街の入口の程近い所まで辿り着いたとき、一人呟いた。

 

 「え?何で?」


 それに思わず聞き返すと


 「まぁ、アレだ、この前まで居た街は、色んな人種が混ざっているところだから、そうでもないんだけどよ、お前も知っての通り、俺ら『獣人』ってのは、色々偏見があるんだよ。ま、どのみちバレるが、街中で動くなら、顔くらいは隠しておいた方が、動き易いってもんさ。」


 「そんなもんなの?」


 「そんなもんだ。お前は、異世界の人間だから、知らないのも無理はない。」


 そう言いながら、フードを目深に被るレーベン

 そんな彼を横目で見ながら、私達は、街に足を踏み入れた。


 


 【商業都市・ディンプル】


 


 「うわぁ・・・さすがに『都市』と銘打っているだけあって、賑やかね。」


 先生と居た村や、この間、依頼を受けた村に比べると、道の整備のされかたも桁違いだった。

 今、立っている、街外れまで、きちんと石畳が敷き詰められ、ところどころに、街路樹が植えてある。

 繁華街まで、雑草がところどころ生えている『村』とは、大きな違いだ。

 でも、元の世界では、どこもかしこも、アスファルトで舗装されていて、それが当たり前だと思っていたけど、こうしてみると、田舎道のデコボコのアスファルトすら、結構人間の手がかかっているんだな、改めてそう思った。

 久々に見る、ちゃんとした『街』としての形態、目の前に広がる、賑やかな風景に、目を奪われた私は、思わず感嘆の声を上げると、レーベンが、私に耳打ちをした


 「だな、俺も足を踏み入れるのは、初めてだが、すごいな。」


 「そうなの?何か今までの口ぶりでは、色んなところを見て回っている感じだけど、そうでもないの?」


 「確かに、色んな街や、村を回ってきたが、こういった所に足を踏み入れるなんて出来ねぇよ、今、ここにこうやって歩いているのも、人間のお前が一緒だからさ。フードを目深に被った人間が、一人でうろついていたら、さすがに怪しいだろ?」

 

 「確かに・・・。中身が人間だって、怪しいわ。」


 「ま、とりあえずここにも変換師のギルドがあるだろ、とりあえず、そこを目指すか。もしかしたら、何らかの情報があるかもしれないぞ。」


 「そうね。」


 と、レーベンに促されるままに、私は、変換師のギルドを探し、その辺の人に聞き回った。

 勿論、話しかけるのは、私。その間、レーベンは顔を見られないように、でも、私と行動しているという雰囲気を出しつつ、振舞っている。

 ややしばらく情報を集めた結果、私達が入ってきた所とは真逆の街の入口近くにあるというところまではわかった。

 

 「ギルドまで、結構距離があるわねぇ・・・」


 思わず呟く私に、レーベンが言った。


 「だな、街の規模自体、結構デカいからな、真ん中突っ切って行かないと、日が暮れちまうぜ、でもなぁ・・・」


 「どうしたのよ。」


 「街の真ん中を通る、すなわち、繁華街に足を踏み入れることになるな。」


 確かに、今居るところは、街外れ、行き交う人もまばらなため、レーベンも素性を隠しきれているのだが、繁華街といえば、人も多い、でも・・・


 「ねぇ、そういえばさ、アンタの素性がバレたらどうなんの?」


 まんま『犬』の風体に、最初はびっくりしたものの、一緒に行動しているうちに、気にならなくなった私は、レーベンの素性がバレたところで、大して大事(おおごと)にはならないんじゃないか?そんな思いだった。すると


 「パニックになるな、俺も以前、獣人や亜人が見当たらない、こういった大きな街で、顔を晒して歩いていたら、突然、警備兵に囲まれてな、いや、酷い目にあったんだよ。」


 「え?何で?ただ歩いていただけでしょ?それって酷くない?」


 「まぁ、腑に落ちねぇが、仕方ないんだ、俺ら獣人は、大方、腕っ節は強いが、頭が良くねぇ、ま、たまに学者として、人間に馴染んで暮らしているヤツもいるが、ほんのひと握りだ、大概は野山に縄張りを持って、道行く人を襲ってだな、生計を立てているか、用心棒みたいなことをしてるヤツがほとんどだな。」


 「あぁ、アンタみたいにね。」


 そう、今喋っている、『獣人』のレーベンとの出会いも、彼が、私の荷物を奪おうと襲ってきたことだったんだっけ。


 「だー!もうその話はしないでくれ、反省してるって。あれは、お前と出会うちょっと前にな、悪い奴にダマされてな、持ち金全部、巻き上げられちまったんだ、それに、困り果てて、あんな事をしたのは、お前が初めて、天に誓う。それに、お前と一緒なら、食い扶持(ぶち)には困らないしな。」


 彼の発言について、ふと思った。これって、平たく言うと、『ヒモが出来た』ってヤツか、元の世界に居た時には、ドラマやマンガの世界だけだと思っていたのに、異次元に来て、ヒモが出来るとは、何か、複雑な気分だ。

 そんな私の思いをよそに、レーベンは続けた。


 「そんなわけだから、獣人ってのは、嫌われ者の代名詞、俺は、こう見えて、結構気が小さいからな、騒がれるのは好きじゃねぇ。」


 「『気が小さい』ってのが、ちょっと引っかかるけど、まぁわかったわ、私もあまり、見知らぬ土地で、面倒事には、首を突っ込みたくないからね。」


 

  □■□


 

 その後、あまり目立たないように、とはいえ、不審者に見えないように振る舞いながら、歩を進めると、気がついた時には、街の中心に来ていた。

 目の前には、見張り台だろうか、高い棟がそびえ、広間には噴水。

 やっぱりファンタジーってのは、街の中心に噴水を置きたがるんだな、不思議だな、と思いつつ、その脇に腰掛け、冷たい水に手を浸した。

 周囲を見渡すと、円形上の広間の角を、ぐるっと囲むように、露店が並んでいて、そこからいい匂いがしてきた。

 そして、その周りで、追いかけっこをして遊ぶ、子供たち。

 どこの世界も、似たようなもんね、一呼吸置いたときに、お腹が空いてきた。

 そういえば、なんだかんだで、何も食べてなかったんだった。


 「ねぇ、レーベン。」


 「何だ?」


 「ちょっと何か食べてかない?露店もあるし。」


 すると、フードで顔は見えないけど、露骨に嬉しそうな声を出すレーベン


 「いいね!俺もずっとハラ減ってたんだ、とはいえ、お前が何も言わないからさ、いつ言おうかと迷ってたんだ。」


 その言葉に、確かに、彼は気が小さいんだな。そう思った。

 彼が、その気になれば、簡単に押さえつけることの出来る、体が小さく、力も弱い私に、そのくらいのことも言えずに、気を遣っているのだ。

 まぁ、でも、彼がそんな性格じゃなかったら、こうやって行動を共にすることなんて出来なかったんだろうけど。


 「じゃあ何か買ってこようか、当然アンタは行けないわね、店の人と、接近したときに、素性がバレちゃうからね。とりあえず何がいい?」


 「肉!」


 「はいはい。」


 いきなり単品の指定、一瞬『お子様かっ!』って突っ込みそうになったけど、そんな素直なところが、彼の持ち味だと思うことにした。

 レーベンを噴水の前に残し、一人私は、露店を見て回った、見たこともない食べ物が、木の器に入っていたり、パンみたいなものでくるまれていたり、この世界に来て、初めて露天を見る私には、目新しいものばかりだった。

 とはいえ、何が口に合うのかわからない、露店の前に出された看板も、何を書いているのかわからない。

 この世界は、不思議と日本語が通じるけど、文字だけは違った。

 何が書いてあるのか、未だにわからないのだ。


 「書いてある文字が、読めないって不便よねぇ。」

 

 こんなことなら、レーベンも連れてくるんだった、そう思いながら、露店を物色する、と、その中に以前、レーベンと一緒に食堂で食べた『マンガ肉』を売っているところを見つけた。

 まぁ、これなら、味も知っているし、外しはしないだろう。


 「すいません、コレ、二つ下さい。」


 露店のオバチャンに言いつつ、お金の入った、革袋を取り出し、台に置く、その時、お金の重みで『ジャリ』っと音がした、その時


 「よーよー、姉ちゃん、その袋、重そうだなぁ、俺が持ってやるよ。」


 男の声がして、いきなり腕を掴まれた。

 振り向くと、目深にフードを被った二人組、そのうちの一人が、私の腕を掴んでいた、その手は、フサフサの毛で覆われている。

 それを見て、気づいた。


 「もしかして・・・アンタ、獣人?」


 盗られまいと、必死で革袋を掴む私、でも、さっきレーベンが言っていた通り、腕っ節では、獣人に、女の私など、適うはずもなかった。

 抵抗もむなしく、手を振りほどかれた勢いで、私は地面に倒されしまった。


 「おいおい、聞き分けの無い姉ちゃんだな、何も盗ろうってわけじゃねぇ、『持ってやる』って言ってんだ、あぁ!?」


 「人の親切は、ありがたく受け取っておくもんだぜ、なぁ、兄弟?」


 倒れた私に、追い打ちをかけるように、凄んでくる二人組、敵わないとはわかっていても、あまりに腹が立ったので

 

 「ふん、世の中には『ありがた迷惑』っていう言葉もあんのよ。この泥棒。」


 言い返すと


 「誰が泥棒だ、俺たち兄弟に言いがかりとは、ふてぇやろうだ!もう勘弁ならねぇ!ちょっとオシオキしないとな!」


 その言葉と同時に、フードを(めく)り上げた、やっぱり案の定、獣人だ、真っ黒い犬、そして、白と黒のブチ犬。


 「ブル・テリアか。もう一匹は雑種ってところかな。犬種について、わからなければ、グーグル先生に聞いてみるのもアリね。」


 「はぁ?何わけのわからんことを、オレら『ホワイト&マッカイ』兄弟に楯突いて、無事で済むとは思うなよ!ヒーーーーハーーーー!」


 「アンタ、いちいち言うことが三流なのよ、それに、アンタ達みたいなヤツがいるから、獣人の立場が悪くなんじゃないの?ちゃんとまっとうに働いてみたらどうなのよ!」


 私も負けじと、声を荒らげたその時。


 「うわーっ!獣人が出たぁ!逃げろーっ!」

 「警備兵を呼べーっ!」

 「ともかく避難だ!女子供は先に逃がせ!」  


 周囲に居た人が、慌てふためきつつ、逃げ回っていた。

 さっきまで、私の相手をしていた、露店のオバチャンも、店の隅に小さくなっている。

 しかし、何でこんだけ嫌われているにも関わらず、フードを被っただけなのに、気づかないのだろう。

 目の前のピンチよりも、そっちの方が気になった。まぁ、ゲームの世界じゃ、一国の王が突然現れた旅人に、何のチェックもしないで、謁見しちゃうんだよな。

 日本じゃ考えられないな、小さな会社の社長に面会するんだって、アポを取ったり、面倒なことをしなきゃいけないのにな。

 まぁ、大らかというか、なんというか、そこがファンタジー世界のいいところなんだろうけども。

 とはいえ、レーベンを置いてきた今、ここは私が戦うしか無いのか。

 顔は相手に向けたまま、目線だけで、草を探す。とはいえ、ここはきっちりと、綺麗に整備された石畳、と、いうことは・・・

 

 「・・・草が、無い。」

 

 私の頭の中に、ふと、段差を踏み外しただけで、気まずいことになる、体の弱い、洞窟探検家が、お亡くなりになった時の音楽が、不意に流れた。


 つづく

 さて、今回のお酒の紹介です。

 

 はじめに

 『スコッチ』とは、英国スコットランドで製造されるウイスキーなんですね。

 ワタクシは、ウイスキーといえば、メンパブで働いている時、客に一気させられて、倒れて以来、あまり飲まなくなりましたねぇ・・・と、そんな思い出話は置いておいて

 まずは一つ目

 

 【ディンプル】

 

 説明書きには、『軽く飲みやすい、スパイシーな風味が特徴』なんですって。

 そしてもう一つ、スコッチではないのですが、今回の悪役の二人組の名前に使ったお酒です

 

 【ホワイト&マッカイ】

 

 『ホワイト』とも『マッカイ』とも関係の無い、ライオンのマークが特徴です。

 ワタクシ自身、匂いを嗅いだだけなのですが、やっぱりウイスキー臭というんですか?

 飲まない人間には、あまり違いはわかりません。

 

 いかがだったでしょうか?

 リクエストがあれば、なんなりとお寄せください。

 出来る範囲で応えていきたいと思ってます。


 最後に


 余談ではありますが、長いこと、お酒をたしなんでいるとですね、そろそろシブくお酒を(たしな)みたいなぁ、なんて思ってます。

 場末のバーか何かで、注文を聞かれた時、低い声で


 「ウィスキー・・・ダブルで。フッ。」


 みーたーいーなー?

 そんな渋いナイスミドルになってみたいもんですよ、ってことで、作者でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ